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『DX』出演で大反響を巻き起こしたダウンタウンファミリーが精鋭揃いである理由

ラリー遠田作家・お笑い評論家

5月5日放送の『ダウンタウンDX』では、今田耕司、板尾創路、ほんこん、東野幸治、木村祐一の5人がゲストとして出演していた。「ダウンタウンファミリー」と呼ばれる彼らが久々に一堂に会したことで、大きな話題を呼んでいた。7月28日の回では「完全版」と称してこのときの未公開トークも放送されていた。

ダウンタウンファミリーとは、主にダウンタウンが若手時代に出演していた大阪ローカルの人気番組『4時ですよ~だ』(毎日放送)に出ていた芸人たちを表す総称である。1989年に『4時ですよ~だ』が終了すると、ダウンタウンは東京進出を果たし、東京でも数多くのレギュラー番組を持つようになった。中でもフジテレビのコント番組『ダウンタウンのごっつええ感じ』は熱狂的な支持を得て、いまや伝説の番組と呼ばれるまでになった。

前述の5人はそんな『ごっつええ感じ』にも出演していたダウンタウンファミリーの中核メンバーであり、それぞれが現在も第一線で活躍している。中でも、今田と東野は司会者として多くの番組に出演していて、確かな地位を確立している。

師弟ではない独特の上下関係

90年代前半頃には、ダウンタウンファミリーの芸人をダウンタウンの番組で見かける機会が多かった。ダウンタウンとファミリーの間にはビートたけしと「たけし軍団」のメンバーのような濃密な関係があった。師弟ではないものの、それに近いような緊張感のある独特の上下関係があった。

若手時代の今田が個人としてダウンタウン以外の番組に呼ばれたときには、ダウンタウンファミリーの鉄砲玉のような気持ちで「絶対にナメられてはいけない」と強気な態度を貫いていたのだという。

ダウンタウンによる「笑いの英才教育」

今田、東野をはじめとして、ダウンタウンファミリーの中に今でも活躍する人が多いのは、ダウンタウンによる「笑いの英才教育」が行われていたからではないかと思う。彼らは若い頃からダウンタウンと同じ舞台に立ち、同じ番組に出て、実力を試されたり、一緒にコントを演じたりしてきた。その中で自然に鍛えられ、腕が磨かれていったのだろう。

「ファミリー」という言葉には温かいイメージもあるが、ダウンタウンファミリーの実態はそんな甘いものではなかった。ダウンタウンと師弟関係で結ばれているわけではないので、実際にはライバルのようなものだ。

対等な立場でダウンタウンとコントを演じたり、松本人志と大喜利で対決したりしなければいけない。笑いにならないような生ぬるいことをすれば、容赦なく血気盛んな浜田の蹴りやパンチが飛んでくる。現代の若手芸人なら震え上がるような状況が、ダウンタウンファミリーにとっての日常だったのだ。

今田・東野はトップクラスのMCに成長

そんな彼らが出演していた当時のダウンタウンの番組は、いい意味で緊張感があり、見ごたえがあった。ボーリングの球を頭で打ち返し合う「ヘッドボーリング」、素足でタンスを蹴り合う「タンスサッカー」など、今では考えられないような過激な企画も多かった。

一時代を築いたダウンタウンの笑いを間近で見てきた彼らは、実地で多くのことを学んでいた。そこで身につけた能力は、ほかの番組に出るときにも生かすことができる。こうして、今田、東野はお笑い界トップクラスの実力派MCとなった。

ダウンタウンファミリーという言葉も久しく聞かなくなったが、ダウンタウンのもとで彼らが時代を代表するカリスマ芸人へと駆け上がる過程を目の当たりにしてきた彼らは、今でもそれぞれが各分野で名を成している。そこは史上最も過酷な「お笑いエリート養成機関」だったのだ。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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