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エルフ、ぱーてぃーちゃん…コロナ禍の時代にギャル芸人が重宝される理由

ラリー遠田作家・お笑い評論家

最近のバラエティ番組では、みちょぱ(池田美優)、藤田ニコル、ゆうちゃみ(古川優奈)など、ギャルタレントの活躍が目立っている。ギャルというものは、派手な見た目でノリが良くてズバズバと本音を言うイメージがあるので、個性的なキャラクターが求められるバラエティ番組との相性はいい。

ただ、今テレビに出ているギャルタレントの多くは、そういったギャルの一般的なイメージを「振り」にして、あえて正論を言ったり的確なコメントを残したりする能力に秀でている。どちらかと言うと「ギャル代表」というよりは「若い女性代表」としてバラエティ番組でポジションを得ている人が目立つ。ギャルタレントはいまや女性タレントの1つのジャンルとして確立されつつある。

お笑い界ではギャル芸人が少なかった

ところが、これまでのお笑いの世界では、ギャルを売りにしている芸人がほとんどいなかった。その理由ははっきりとはわからないが、考えられるのは、そもそも女性で芸人を目指す人の絶対数が少ない上に、女性全体の中のギャルの割合も少ないため、ギャルでありながらお笑いの道に進む人が極端に少ない、ということだ。

その上、ほとんどの芸人はお笑いに対してまっすぐに向き合おうとするため、「ギャル」のようなもともと自分の中にあるキャラクターを生かすことは安易であると考えて、それを避けるようになるのかもしれない。

そんな中で、最近「エルフ」と「ぱーてぃーちゃん」という2組のギャル芸人が彗星のごとく現れて、数々のバラエティ番組に出演して話題を呼んでいる。

エルフ荒川は憧れを形にしたギャル芸人

エルフは「荒川」と「はる」の2人から成る女性コンビ。荒川は派手な金髪がトレードマークの生粋のギャル芸人。地味な外見のはると好対照を成している。荒川は両手でハートマークを作って叫ぶ「ハピネス」という決めフレーズを持っている。

エルフの漫才は、荒川のギャルキャラクターを前面に押し出す形で作られている。ギャル特有の底抜けの明るさを発揮して空気の読めない言動を繰り返し、相方のはるにツッコまれる。

彼女たちは2021年の元日特番『ぐるナイ おもしろ荘』に出演して注目を集めた。その後はさまざまな番組に出演。特に、荒川が自由奔放に暴れ回るロケ企画が話題を呼んでいる。

荒川は中高生の頃からギャルに憧れていたが、校則が厳しかったため当時は黒髪のまま過ごしていた。芸人養成所に入ってから、髪を金髪に染めて念願のギャルデビューを果たし、そのキャラクターを貫いている。学生時代にギャルになりたいのになれなかったという経験をしているからこそ、現在の荒川には突き抜けた解放感があって、それが見る人の心に刺さっているのかもしれない。

ぱーてぃーちゃんは素人っぽさが新しい

ぱーてぃーちゃんは、男性のすがちゃん最高No.1、女性の信子と金子きょんちぃの3人から成る男女トリオ。信子ときょんちぃのギャルコンビにすがちゃんが加わる形で、2021年4月に結成された。

彼らの漫才では、ギャル2人がひたすら羽目を外して暴走するのに対して、ホスト風ファッションのすがちゃんがキザなしゃべり方でツッコミをいれていく。3人揃って両手で「イヴ・サンローラン」のロゴを真似た決めポーズを作ることもある。

彼らは2022年の元日特番『ぐるナイ おもしろ荘』に出演して脚光を浴びた。有吉弘行からは「令和の安田大サーカス」というお墨付きをもらった。

エルフの荒川の場合、キャラクターの完成度が高いので、ネタもトークも安心して見ていられるところがある。一方、ぱーてぃーちゃんの信子ときょんちぃは、良くも悪くも荒削りな素人っぽさを売りにしているようなところがある。そこがやや不安定で危なっかしいが、だからこそ新しいとも言える。

2人のギャルの自由気ままな暴走をすがちゃんが正確無比なツッコミで抑え込んで笑いを生み出していくところが見事である。

オリエンタルラジオの藤森慎吾、EXITなど、チャラさを売りにしている男性芸人はこれまでにも存在していたが、その女性版とも言えるギャル芸人は今までほとんど存在していなかった。

そんな中で、突然出現したエルフとぱーてぃーちゃんは、ギャル芸人の今後を占う試金石となるだろう。芸人以外のギャルタレントが多いことからもわかるように、もともとギャルとテレビは親和性が高いものである。持ち前の明るさを生かして、ギャル芸人にはコロナ禍の暗いムードを吹き飛ばすような活躍を期待したい。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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