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目指すはレギュラー20本! 絶好調芸人かまいたちが天下取りを目指す理由

ラリー遠田作家・お笑い評論家

かまいたちの濱家隆一と俳優・歌手の生田絵梨花がMCを務めるNHKの音楽番組『Venue101』が4月にスタートした。濱家はかまいたちとして多くの番組に出演しているだけでなく、個人でも2021年3月から1年にわたって朝の情報番組『ZIP!』(日本テレビ)の水曜パーソナリティを務めてきた。

在阪局制作の番組も含めると、かまいたちはほぼ民放全局でレギュラーを持っているような状態にあった。そんな中で、濱家がNHKでもMCを務めるというのは、いよいよかまいたちが「全局制覇」に一歩近づいたと言える。

『M-1』準優勝で注目される

ここ数年のかまいたちの活躍には目覚ましいものがある。彼らは2017年にコントの大会『キングオブコント』で優勝して頭角を現した。しかし、その時点では全国ネットのレギュラー番組に出ているわけでもなく、一般的な知名度はそれほど高くなかった。

彼らが多くの人に知られるようになった最初のきっかけは、2019年に漫才の大会『M-1グランプリ』で準優勝を果たしたことだ。このときには、優勝したミルクボーイ、3位に食い込んだぺこぱと激しい死闘を演じて話題を呼んだ。その後、全国ネットのバラエティ番組でも彼らの姿を見かける機会が増えてきた。

彼らは大阪ではすでに売れっ子だったのだが、東京のテレビに出始めた頃には、与えられたチャンスに貪欲に食らいつき、自分たちを積極的にアピールしていった。

愛のあるイジリを全面的に受け入れる

大勢の芸人がひな壇に座っている『ロンドンハーツ』(テレビ朝日)では、少しでも目立つために、ボケ担当の山内健司は掃除機を股間に当てる体を張ったパフォーマンスをたびたび披露した。一方の濱家も先輩芸人にイジり倒され、椅子の上に座っていることから「いすのうえ隆」に改名することを勧められたりした。

芸歴や大阪での実績を考えれば「そこまでしなくても……」と思われるほど、上京当初の彼らはガツガツしていた。「自分たちは大阪では売れっ子だったんだ」というような余分なプライドを一切見せず、先輩からの愛のあるイジリを全面的に受け入れていた。

ここで彼らの覚悟がテレビスタッフや共演する芸人にも伝わり、かまいたちは信頼を勝ち取った。それがその後の快進撃につながっていった。

芸人の中には、自分たちの芸にプライドを持っていて、仕事を選ぶような人もいるのだが、かまいたちの2人はいい意味でこだわりが少なく、スタッフに求められたことは何でも積極的にやろうとする。

ニーズを満たす抜群の対応力

彼らは地上波の民放で「ほぼ全局制覇」を成し遂げているが、ラジオ番組やYouTubeもやっているし、ネット配信番組にも出演している。求められているものを確実に提供する抜群の対応力があったからこそ、短期間で着実に仕事を増やすことができたのだ。

また、大阪を拠点に活動していた頃に比べると、濱家の見た目とキャラクターが劇的に変わったことも大きい。彼が痩せてスマートな体型になったことで、コンビとしての印象も変わった。お笑いファンにだけ愛されるローカル芸人ではなく、万人に愛される全国区のテレビタレントになる資格を得た。

今回、濱家がNHKで新たにMCを務めるというのは、幅広い世代に好かれる落ち着きのあるタレントとして認められた証である。

しかし、彼らの野望はまだ終わりではない。6月30日放送の『ダウンタウンDX』(読売テレビ・日本テレビ系)で濱家は「今年レギュラー20本まで行きたい」とさらなる目標を語っていた。「天下取り」に向かうかまいたちの快進撃はまだまだ続きそうだ。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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