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朝ドラ『カムカムエヴリバディ』にも出演中! おいでやす小田の大声ツッコミが面白い理由

ラリー遠田作家・お笑い評論家

2月7日、TBSの朝の番組『ラヴィット!』においでやす小田が出演した。彼は現在、裏番組のNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』にも出演している。同じ時間帯に放送されている2つの局の番組に同時に出演する「裏カブリ」を避けるために、小田は番組開始から15分遅れでスタジオに現れた。

川島明に代わって司会を務める東野幸治から「(裏番組に出ているのでNHKの仕事は)普通やったら断る」とイジられて、小田は大声で「断るか!」と返していた。

プロの芸人が見せる笑いには「動きの笑い」と「言葉の笑い」の2種類がある。どちらも高度な技術が求められる立派な芸ではあるのだが、どちらかというと今は言葉の笑いが優勢の時代であり、テレビなどで活躍する芸人のほとんどがそちらを得意としている。

現代は言葉の笑いの時代であり、芸人たちは瞬間的に繰り出すフレーズの面白さを競い合っているようなところがある。芸人が自分の出演したバラエティ番組を見るときには、自分の発言がテロップになっているか(文字として画面上に表示されているか)を気にすることが多いという。

ツッコミのやり方にも時代ごとの流行り廃りがあり、今はツッコミのフレーズ自体を工夫するのが主流だ。何かにたとえてツッコむ「たとえツッコミ」などが人気を博していて、それを得意とする芸人が活躍している。

そんな中で、おいでやす小田は時代に逆行したツッコミ芸で話題になっている。彼はピン芸人のこがけんとのコンビ「おいでやすこが」として、2020年の『M-1グランプリ』で準優勝を果たし、一気にブレークした。

小田は、頭の血管が切れそうなほど激しく力強いツッコミで知られている。あまりフレーズをこねくり回したりしない直球型のツッコミである。古き良き王道のツッコミと言ってもいい。

そんな時代にそぐわないツッコミ芸を売りにしていたということもあり、小田はピン芸人としてはなかなか世間に認められなかった。専門家には高く評価されるしっかりした芸を持っていたので、ピン芸日本一を決める大会『R-1グランプリ』(当時の表記は『R-1ぐらんぷり』)では5年連続で決勝に進んでいた。しかし、一度も優勝することはできなかった。

小田のツッコミ芸は芸人の間では以前から評判だった。特に、雑にイジられたときの返しの面白さには定評があり、仲間の芸人たちが彼をひたすらイジり倒す「おいでやす小田で遊ぼう」というライブもたびたび行われていたほどだ。

ピン芸人だった彼の才能は意外な形で開花した。こがけんとコンビを組んで、漫才を披露したところ、それがウケまくった。あれよあれよという間に昨年の『M-1』では決勝まで勝ち上がり、あと一歩で優勝というところまで行った。

小田が『M-1』で評価されたのは、コンビで漫才を演じることで、彼のツッコミの面白さが伝わりやすくなったからだろう。一人芸のときには、架空のボケ役を相手にして彼がツッコミをいれるネタが多かった。

その形式だと、舞台上では小田が1人で一方的にツッコみ続けているように見えてしまうため、お笑い好き以外の一般人にとってはやや味付けが濃すぎるというふうに感じられたのかもしれない。こがけんのボケに対するツッコミに徹したことで、純粋なツッコミの面白さが際立つことになった。

おいでやす小田には気の利いたフレーズなんて要らない。「コラーーー!」や「おーーーい!」で十分だ。それだけで笑いを起こせるところが彼の非凡な才能なのだ。俳優業にも活躍の幅を広げている「ツッコミの神に愛された男」の至高の芸に今後も注目したい。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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