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『キングオブコント2021』優勝候補はマヂカルラブリー? 要注目の芸人と見どころを完全解説!

ラリー遠田作家・お笑い評論家

10月2日にコント日本一を決める『キングオブコント2021』の決勝が行われる。この大会の模様は毎年、TBS系列全国ネットで生放送されている。今年は昨年に続いて「お笑いの日2021」という生放送特番の中の目玉企画として行われる。

決勝に駒を進めたのは、ニューヨーク、空気階段、ニッポンの社長、うるとらブギーズ、マヂカルラブリー、ジェラードン、蛙亭、男性ブランコ、そいつどいつ、ザ・マミィの10組。この中のたった1組だけが、優勝してキングの称号と賞金1000万円を手にすることになる。

コロナ禍の影響で吉本芸人が有利に

今年も昨年に続いて、吉本興業の芸人の割合が高かった。実に10組中9組が吉本芸人で占められている。そうなったのはコロナ禍の影響が大きいと考えられる。

昨年、コロナ禍により緊急事態宣言が発令されて以来、お笑いライブは軒並み公演中止になっていた。何とか公演が再開できる状況になってからも、お笑いライブの回数が減ったり、無観客や少ない客席数でライブが行われたりしてきた。

吉本興業のお笑いライブも一時は全面中止になっていたのだが、公演の再開は比較的早かった。吉本興業は客席数の多い自前の劇場を持っているため、席の間隔を空けて感染に配慮しながら、通常に近い形の公演をいち早く再開することができた。

そのため、昨年から今年にかけては、吉本芸人と他事務所の芸人の間で、ライブの出演本数に極端に差が出ることになった。芸人は舞台でネタを磨いていく。ライブに出る機会が少ないと、ネタの完成度が落ちてしまうのはやむを得ない。今回、唯一の他事務所の芸人であるザ・マミィには、何とか意地を見せてほしいところだ。

優勝候補の筆頭は「三冠」を目指すマヂカルラブリー

ファイナリストの中で優勝候補を挙げるとすれば、その筆頭はマヂカルラブリーである。言わずと知れた『M-1グランプリ2020』のチャンピオンであり、最近では数多くのテレビ番組にも出演している。

しかも、ボケ担当の野田クリスタルはピン芸の大会『R-1ぐらんぷり』(現在の表記は『R-1グランプリ』)でも優勝を経験しており、『キングオブコント』で優勝すれば前人未到の「三冠」を達成することになる。その点では話題性もある。

マヂカルラブリーのネタは突飛な設定のものが多いため、見る側に彼らを受け入れる態勢ができていないと、面白さが伝わらないことがある。

だが、今の彼らはすでにテレビにもたくさん出ていて、そのキャラクターも広く認知されている。この状況は彼らにとって追い風となるだろう。唯一の弱点を克服している今、彼らが今大会の大本命であるのは間違いない。

対抗馬のニューヨークは期待大

そんな彼らの対抗馬となりそうなのがニューヨークである。ニューヨークもマヂカルラブリーと並んで今をときめく芸人の1組である。『M-1グランプリ』『キングオブコント』で活躍して以来、テレビに出る機会が増えて、冠番組も始まった。

ニューヨークは皮肉っぽい目線を生かしたネタを得意としているが、それだけにとどまらない多彩なネタを持っている。彼らのキャラクターはテレビ・お笑い好きにはすでに知られている。現在の彼らの勢いを考えると、普段通りにネタを演じることができれば、それだけであっさり優勝をさらってしまうかもしれない。

そいつどいつとニッポンの社長の強み

ダークホースとして個人的に注目しているのは、そいつどいつとニッポンの社長である。そいつどいつは2019年の『キングオブコント』準決勝でネタを見たときに、あまりの面白さに感銘を受けた。

この年には惜しくも決勝には上がれなかったのだが、大会アンバサダーを務めていたバイきんぐの小峠英二も一押しの芸人として名前を挙げていたほどだった。この頃から業界内では注目の存在となっていた彼らが、今年ついに満を持して決勝進出を果たした。優勝も十分に射程圏内だろう。

ネタ作りには0から1を生む最初の発想が重要だと思うのだが、ニッポンの社長はその「ゼロイチ」のセンスがずば抜けている。最初の「1」のところですでにほかの人が思いつかないような変なところに行っている。2人が2人とも何を考えているのかわからない底知れない不気味な雰囲気を持っており、それが彼らのコントをさらに奥深いものにしている。

もちろん、ここに挙げた4組以外のファイナリストもそれぞれ実力者であり、誰が優勝してもおかしくはない。『キングオブコント2021』は、10月2日の19時からTBS系列全国ネットで生放送される。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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