9月12日、『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS)が最終回を迎えた。高視聴率を記録する話題作となった本作でとりわけ注目されていたのが、連続ドラマ初出演となるモデルの佐藤栞里だ。主人公である喜多見幸太(鈴木亮平)の妹という重要な役柄を演じて、女優として存在感を発揮した。主にバラエティ番組で見かけることの多い彼女だが、今後は役者としての活動も増えていくかもしれない。

バラエティタレントとしての佐藤の活躍が見られる代表的な番組が『有吉の壁』(日本テレビ)である。MCの有吉弘行の隣でアシスタントを務めて、ロケでは有吉と共に遊園地や学校などを歩き回り、スタジオでは進行役を務める。そこで芸人たちの熱の入ったパフォーマンスを目にして、無邪気な笑顔を浮かべる。

どちらかと言うと女性に敬遠されがちな泥臭い笑いも多い番組だが、佐藤は決してその空気を壊さない。出しゃばることもなければ過度に遠慮することもない。ちょうどいいたたずまいでいつも底抜けに明るい笑顔を見せている。

『しゃべくり007』(日本テレビ)に佐藤がゲストとして出演した際には、番組の収録が終わるたびにノートに反省点をメモする真面目な一面が明かされていた。ロケの前には自らロケ現場を下見する「ロケハン」を行ったこともあるという。

また、収録前には共演者の情報を徹底的にリサーチして、芸人ならどんなネタをやっているかということまで事前に確認する。

しかし、それだけ裏で努力をしていると公言しても、佐藤にはどこか隙がある感じがする。悪い意味での計算高さのようなものがほとんど感じられない。昨今のバラエティ番組に出ている女性タレントの中でも珍しいタイプだ。

最近の女性タレントのトレンドは「戦略性」と「わかってる感」である。テレビがどんどんタレントの素の部分を求めるようになってきたため「バラエティではこういうふうに考えて立ち回っています」などと誰もが堂々と言うようになった。

戦略を立てて、それを実行する。結果が出なければ改善策を寝る。そんなPDCAサイクルを回せる有能なビジネスパーソンのような人間でなければ、女性タレントとして生き残れない時代になっている。

たとえば、あれほど自由奔放なキャラクターに見えるフワちゃんですら、言葉の端々にテレビタレントとしての高い自意識が垣間見える。

若い女性タレントに求められるもう1つの要素は、暴走する男性芸人や共演者をたしなめたりする役割だ。例えば、指原莉乃や池田美優(みちょぱ)はしばしばその役目を担っている。

芸人がきつい下ネタを言ったりしてふざけ方が度を過ぎているときに、女性視聴者の目線で「それはやりすぎですよ」と釘を刺す。この役割を果たす女性は、どっしりと構えた図太い雰囲気の人が多い。

その点、佐藤は売れっ子のバラエティタレントではあるが、それらの要素に当てはまらない。どちらかというとロケもスタジオもそつなくこなせる優等生タイプだ。しかし、ハキハキしたそつのないキャラでもない。

「トークが上手い」「芸が面白い」「リアクションがいい」といった特定の強みがあるわけではなく、そこにいるだけで癒やされる、気の利いたコメントができなくてもそれはそれで許される、という特異なポジションだ。

佐藤は、何らかの能力があるというよりも、「ない」ことが強みになっているタレントだ。何がないかというと「熱」がない。ガツガツしたところがなく、余分な力が抜けているように見える。

明石家さんまあたりが言い出して以来、「バラエティ番組は戦場」というのが定説になっており、ひな壇に座る若手芸人たちは戦々恐々として必死で前に出ようとする。女性タレントもそんな芸人に負けないように必死になる。

でも、佐藤はそうではない。ガツガツしたところがなく、マイペースで無邪気に笑っている。影の努力も苦労も戦略もあるはずなのに、それを一切感じさせない。それでいて「サボっている」とか「調子に乗っている」といったネガティブな感じもない。彼女がその場にいることが番組にとって確実にプラスになっている。そういう不思議な存在なのだ。

かつて有吉弘行はベッキーに「元気の押し売り」というあだ名をつけた。佐藤は押し売りをしないどころか、そもそも商品を陳列すらしていない。無理に売ろうとしなくても自然に売れていく。「佐藤栞里」はそういう商品なのだ。

どれだけ長くバラエティに出ていても、佐藤にはどこか隙がある。「隙」は容易に「好き」に変わる。生き馬の目を抜くバラエティの戦場で、すらっとした手足の女性モデルが見せる飾らない無邪気な笑顔が、視聴者や共演者の「好き」を勝ち取ることになる。

佐藤栞里は戦場に咲く一輪の花。ほかの人がどんなに緻密に戦略を立てても、同じ花を咲かせることはできないだろう。