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「キングオブコント2013」王者の知られざる"女装芸人伝説"

ラリー遠田作家・お笑い評論家

9月23日、コント日本一を決めるお笑いイベント「キングオブコント2013」が行われました。TBS系全国ネットでも放送されたこの大会で熱戦を制して優勝を果たしたのは、サンミュージックプロダクション所属のお笑いコンビ・かもめんたる。岩崎う大、槙尾ユウスケの2人組が6代目王座に輝きました。

お笑いライブシーンで彼らの活躍をずっと見守ってきた立場として、この優勝には感慨深いものがあります。かもめんたるは、独創的で質の高いコントを作り続けていて、昔から芸人やお笑いウォッチャーの間での評価は高かったのです。ただ、世に出るためのチャンスをなかなかつかめずに、苦難の日々が続いていました。今回の優勝は、彼らが次のステージに進むための大きなきっかけとなるはずです。

そんなかもめんたるの槙尾さんは、実は「女装大好き芸人」として知られています。彼が女装に目覚めたきっかけは、コントで女性役を演じたこと。女性の演技をしているうちに、いつのまにか本格的に女装の道に入っていきました。最近では、同じ女装芸人仲間であるトップリードの新妻悠太さん、鬼ヶ島の和田貴志さんといったメンバーを集めて「女子会~女装好き男子の会~」というトークライブを定期的に開催しています。男性芸人たちが思い思いの女装姿に身を包み、下ネタ全開の女子会トークをする様子は圧巻。ライブはいつも大盛況です。

そんな女装芸人たちの中でも、槙尾さんだけは「格が違う」と一目置かれています。何しろ、女装への本気度が他の芸人とは比べものにならないのです。槙尾さんのどこがすごいのか? その伝説の一部を紹介します。

ツイッターのアイコンはもちろん女装姿

槙尾さんのツイッターアカウント(@makiokamomental)を見てください。2013年9月24日現在、アイコンの画像はもちろん女装している自分の姿。ツイッターでは定期的に女装写真をアップして、フォロワーの人たちから「かわいい」「きれい」と言われては喜んでいます。7月に行われたかもめんたるの単独ライブでは、槙尾さんの女装写真が大きくプリントされたクリアファイルも販売されていました。とにかく女装姿の美しさには自信満々なのです。

女装すると急におしゃべりになる

プライベートでは割と無口な槙尾さん。でも、女装をすると一転して勢いよくペラペラしゃべり出します。しゃべり方もいわゆるオカマ口調ではなく、良くも悪くもそこら辺にいるギャルみたいな軽薄な言葉づかい。オカマっぽいのではなく女っぽい、というのがポイントです。

普段の言動も女子っぽくなっている

最近の槙尾さんは、女装に気持ちが入りすぎて、普段の言動もどんどん女子っぽくなっています。普通に話しているだけなのに、いつのまにか言葉が女性っぽくなり、手つきや動きもなよなよしてくる。ライブで共演する芸人たちがつっこまずにはいられないほど、普段の姿と女装のさかいめがなくなりつつあるのです。

高校時代、クラスメイトの男子に恋をしていた?

槙尾さんは男子校育ちです。それなのに、高校時代のクラスメイトに「気になる子がいた」と発言していたことがあります。男子校や女子校では同性愛者がいるという噂はよく聞きますが、槙尾さんもかなりそういう路線に近い、ギリギリの青春を送っていたのは間違いないようです。

黒人にナンパされて大喜び

2013年7月30日、新宿・ネイキッドロフトにて、私が主催するトークイベント「お笑いトークラリーvol.22『真夏の女装芸人ナイト』」が行われました。そこでは、槙尾さんを含む女装芸人の皆さんがゲストとして出演されていました。そのライブの特別企画として、槙尾さんが女装姿で夜の街に繰り出して、見知らぬ男性から声をかけられるかどうかチャレンジすることになったのです。

結果は……見事、わずかな時間で2人の男性からナンパされていました! これを報告したときの槙尾さんのうれしそうな顔が忘れられません。しかも、1人は黒人の男性だったそうです。槙尾さんの女装は世界レベルで通用するのかもしれません。

……ほかにも、「かもめんたるを『カマめんたる』と言い間違えた」「ホルモン投与にも興味津々」「女性特有の生理現象が自分にも来たと言い張っている」など、槙尾さんの女装伝説は数え上げればきりがありません。

槙尾さんは単なる「オネエ系」や「女装好き」とも一線を画する、独自の道を突き進んでいます。彼(彼女)は果たしてどこへ向かうのか? かもめんたるというコンビの今後の活躍に期待すると共に、槙尾さんの女装がどういう方向に発展していくのかにもご注目ください。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行っている。主な著書に『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『この芸人を見よ! 1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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