職域接種が開始され、若い世代の方々にもワクチン接種が始まっています。

一方で、若い方の中には「どうせ重症化しないし、副反応が怖いから」という理由で接種を希望しない方もいらっしゃるようです。

若い方がワクチンを接種する意義についてご紹介します。

若い世代ではワクチン接種を希望しない人が多い

年齢性別ごとの「ワクチン接種をしたくない」と回答した人の割合(国立精神・神経医療研究センターのプレスリリースより)
年齢性別ごとの「ワクチン接種をしたくない」と回答した人の割合(国立精神・神経医療研究センターのプレスリリースより)

年齢が若い人の方が「ワクチン接種をしたくない」と考えている人が多いことが、様々な調査から明らかになっています。

国立精神・神経医療研究センターが行った調査でも、「ワクチン接種をしたくない」と答えたのは高齢男性の4.8%、高齢女性の7.7%であった一方、若年男性は14.2%、若年女性は15.6%でした。

ワクチン接種をしたくない理由(国立精神・神経医療研究センターのプレスリリースより)
ワクチン接種をしたくない理由(国立精神・神経医療研究センターのプレスリリースより)

その理由としては「副反応が心配だから」と答えた方が圧倒的に多く、その他には「あまり効果があると思わないから」「自分は感染しないと思うから」「自分は重症化しないと思うから」などが多くなっています。

新型コロナワクチン接種後の発熱の頻度(第55回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会資料より)
新型コロナワクチン接種後の発熱の頻度(第55回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会資料より)

確かに日本国内のmRNAワクチン接種後の副反応調査では、年齢が若い人ほど発熱などの副反応の頻度が高くなることが分かっています。

しかし、これらの副反応は通常接種1〜2日後で自然と収まります。

また、若い人では特に男性で心筋炎の副反応が報告されています。これらの副反応は2回目の接種後に多く、接種後5日以内に症状が出現する、という特徴があります。

これらはおよそ10万件に1件くらいの頻度であり、稀な副反応であること、そして報告されている症例の大半が軽症であることから、過度に心配するものではないと考えられます。

副反応の心配以外の理由である「あまり効果があると思わないから」「自分は感染しないと思うから」という回答については、ワクチンや新型コロナそのものに対する理解が不十分であることが、ワクチン接種をしないことにつながっている可能性があります。

若い世代での接種率を高めないと流行は終わらない

東京都における年齢別の感染者の割合(第52回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料より)
東京都における年齢別の感染者の割合(第52回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料より)

さて、東京都の現在の感染者の大半は若い世代であることが分かっています。

これまでの流行では、流行の初期に若い世代での感染が広がり、流行が広がるにしたがって高齢者にも感染者が増えていくというパターンをたどっていました。

第4波は幸いなことに高齢者にあまり広がらないまま感染者が減少に転じましたが、感染者数が再上昇している6月中旬以降はさらに若い世代での感染者が増えています。

この若い世代での感染者の拡大は、第5波の始まりを見ている可能性と、高齢者のワクチン接種が進んだことで高齢者の感染者が減っている可能性、あるいはその両方が考えられます。

いずれにせよ、高齢者や基礎疾患のある人でワクチン接種が進めば重症者数は減少することが期待されますが、若い世代にもワクチン接種が進まなければ、感染者数そのものを大幅に減らすことは難しいでしょう。

つまり、日本国内での新型コロナの収束のためには若い世代のワクチン接種率を高めることが必要になります。

変異ウイルスの影響で若い世代でも重症化する人が増えている

デルタ変異ウイルス(いわゆるインド型)の東京都内における陽性率の推移(第52回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料より)
デルタ変異ウイルス(いわゆるインド型)の東京都内における陽性率の推移(第52回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料より)

日本国内では第4波以降、アルファ変異ウイルス(いわゆるイギリス型)が主流となり、若い世代でも重症化する事例が増加しました。

現在、都内ではデルタ変異ウイルス(いわゆるインド型)が徐々に増加してきています。すでに8%を超えており、すでに封じ込めは厳しい段階に来ていると考えられることから、そのままアルファからデルタへの置き換わりが起こっていくものと考えられます。

すでにデルタが広がっているスコットランドからの報告では、デルタに感染した人は、重症化リスクが高いとされていたアルファに感染した人よりも入院するリスクが2倍になったことが示されており、デルタは感染力だけでなく重症化リスクもアルファより高いと考えられます。

アルファからデルタに置き換わるに従って、若い世代でも重症者が増加することが懸念されます。

同報告ではmRNAワクチンはデルタ変異ウイルスにも予防効果があることも示されており、やはり変異ウイルスへの最大の対策はワクチン接種と言えます。

若い軽症の人でも後遺症に悩まされている人がいる

新型コロナ感染後の脱毛の経過(https://doi.org/10.1016/j.ijid.2021.04.088)
新型コロナ感染後の脱毛の経過(https://doi.org/10.1016/j.ijid.2021.04.088)

新型コロナに感染した人のうちほとんどの人は回復後、通常の健康状態に戻る一方で、回復した後も数週〜数ヶ月間様々な症状が続く方がいます。

このいわゆる「後遺症」と呼ばれる病態は、当初は主に入院を要するような重症度の高い感染者での報告が多かったのですが、軽症であった感染者の後遺症の報告も増えてきています。

上の図は国立国際医療研究センターでの軽症の新型コロナ患者の脱毛の経過ですが、軽症の方であっても長期間続く脱毛がみられることがあります。

ノルウェーからも軽症者の後遺症についての研究が出ています。

自宅隔離となった軽症の新型コロナ患者247人と入院患者65人を含む312人の患者の後遺症に関する調査で、発症から6ヵ月経過しても全患者の61%で何らかの症状が持続しており、この後遺症の頻度は、重症度とは関係なくみられたとのことです。

16~30歳の若年層の52%が6ヵ月後になんからの症状を呈しており、味覚や嗅覚の喪失(28%)、疲労感(21%)、呼吸困難(13%)、集中力の低下(13%)、記憶障害(11%)などの症状が認められました。

また男性が新型コロナに感染すると精子数が減少するという報告も出ています。これによって男性不妊につながるのかはまだ分かっていませんが、もしそうであれば深刻な後遺症ということになります(なおmRNAワクチンを接種しても精子は減少しなかったという報告がアメリカから報告されています)。

これらの後遺症を防ぐためには、感染しないことが最も重要になります。したがって、やはり若い方にとってもワクチン接種をする意義があるということになります。

ワクチンには自分だけでなく周りの人を感染から守る効果がある

当初、mRNAワクチンは「発症を防ぐ」のであって感染そのものを防ぐかどうかは分かっていない、と言われていましたが、感染を防ぐ効果も分かってきました。

発症を防ぐことと、感染を防ぐことと、何が違うのか、別に本人にとっては同じじゃないか、と思われるかもしれません。

確かに本人にとってはあまり大差ないかもしれませんが、ワクチン接種者が感染しにくくなる、ということは、接種者がその周りの人に感染を広げる可能性が低くなる、ということです。

若くて持病もない人の中には「どうせオレ、感染しても重症化しねえし・・・接種しても意味ねえし・・・」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、自分の家族や周りの人を感染から守ることができるのであれば接種する意義は十分あると言えるのではないでしょうか。

メリットとデメリットを考えて接種を検討することが大事

ワクチンを接種するメリットとデメリット(筆者作成)
ワクチンを接種するメリットとデメリット(筆者作成)

若い世代の方がワクチン接種をするメリットとデメリットについて述べてきました。

前述の国立精神・神経医療研究センターの研究では、ワクチンや感染症に関する誤った理解がワクチンを接種しない理由として挙げられていました。

新型コロナ、そしてワクチンに関する正しい理解のもとで、ご自身にとって接種した方が良いのか、しない方が良いのかについてご検討ください。