新型コロナ 海外でも第2波は第1波より致死率が低いのはなぜか?

(写真:つのだよしお/アフロ)

日本では第2波の致死率は第1波よりも低いことが明らかに

第2波はまだ完全に収まってはいませんが、現時点での解析が国立感染症研究所から発表されました。

国立感染症研究所からの発表によると、

致死率は「第1波」は5.8%で、「第2波」では、8月19日時点で0.9%でした。70歳以上では「第1波」は24.5%、「第2波」は8.7%と大きく低下しました。

推計を担当した鈴木基センター長は、「ウイルスが弱毒化した説は考えていない。検査対象の拡大により、無症状や軽症例が多く見つかるようになったため、致命率が下がったとみられ、「第2波」の数値の方が、病気の実態を、より表している可能性がある」と話しています。

出典:第2波コロナ致死率「0.9%」大きく減る

とのことであり、検査対象の拡大によってより軽症の症例まで診断されるようになったことを理由として挙げています。

これは筆者が7月26日に投稿した「新型コロナが弱毒化しているという根拠はない」で述べた見解と一致しています。

第1波と第2波における症例全体のうち診断できている比率(筆者作成)
第1波と第2波における症例全体のうち診断できている比率(筆者作成)

第1波では氷山の一角しか診断できていなかった新型コロナが、今では検査体制の強化によってもう少し感染者の全体像が見えるようになってきている状況と考えられます。

これが、第1波と比べて感染者全体に占める重症者数が少ない理由の一つです。

PCR検査の優先度と陽性率との関係(Tomas Pueyo氏作成の図を筆者が加筆)
PCR検査の優先度と陽性率との関係(Tomas Pueyo氏作成の図を筆者が加筆)

つまり、第1波では検査数が追いついておらず、実際の感染者のうちに診断できていたのはごく一部であったのに対し、第2波ではもう少し実際の感染者の全体像を捉えられているものと考えられます。

第1波では重症例に優先的検査を行っていたことから、軽症例は検査が行われずに見逃されている事例も多かったものと考えられますが、第2波では、重症例、軽症例に加えて濃厚接触者や帰国者にも検査が行われています。

これに加えて、筆者は「医療現場で新型コロナの治療の標準化が進められたこと」を致死率低下の理由として挙げたいと思います。

新型コロナの経過と治療薬の考え方(doi:10.1016/j.healun.2020.03.012を参考に筆者作成)
新型コロナの経過と治療薬の考え方(doi:10.1016/j.healun.2020.03.012を参考に筆者作成)

新型コロナの病態に対する理解も進んでおり、発症初期のウイルス増殖期には抗ウイルス薬、そして発症から7~10日以降の過剰な炎症反応が起こる時期には抗炎症薬が有効ではないかと考えられるようになってきました。

そして、抗ウイルス薬としてはレムデシビル、抗炎症薬としてはデキサメタゾンがランダム化比較試験という臨床研究で効果が示され、臨床現場でも中等症~重症例に使用されるようになってきました。これも第1波とは大きな違いと考えられます。

実感として、第2波では、中等症~重症患者の救命率が高くなっているように感じます。

海外でも「第2波は致死率が低い」という報告が出ている

「第2波は第1波よりも致死率が低い」という現象は海外でも観察されています。

ヒューストン都市部の病院における第1波と第2波の入院患者の重症度の違い(JAMA. 2020;324(10):998-1000.より)
ヒューストン都市部の病院における第1波と第2波の入院患者の重症度の違い(JAMA. 2020;324(10):998-1000.より)

この図はヒューストンの都市部にある病院の入院患者の推移を見たものですが、第1波と比較し第2波は入院患者数は3倍以上になっているのに対し、ICUに入室する重症患者の数はほとんど変わっていません。

ヒューストンでも第2波では感染者の中心が若年層に移っており、基礎疾患のある人や高齢者など重症化のリスクが高い人が相対的に減っていたとのことです。

またこの論文の筆者らは、これらに加えて検査数の増加、病院における医療管理の向上を致死率低下の理由として挙げています。

別の香港の研究者らによる研究では、第2波を経験した53カ国における新型コロナの致死率を計算し、ほとんどの地域で第2波では第1波に比べて致死率が低いことが明らかになりました。

調査対象となった53カ国のうち43カ国では、第2波の致死率が第1波よりも低かったことが明らかになっており、第2波の方が致死率が高かったのはほとんどが現在深刻な感染拡大が見られている南半球(ペルー、チリなど)でした。

世界全体の致死率もゆっくりと低下している

世界各国の致死率の経時的な変化(Our World in Dataより)
世界各国の致死率の経時的な変化(Our World in Dataより)

世界全体の致死率は4月中旬にピーク(約7.3%)を迎えた後3.3%まで低下してきています。

日本も致死率が5%を超えている時期もありましたが、現在は2%を切るところまで低下しています。

致死率が最も高いのはヨーロッパ(5.7%)ですが、これは日本や各国と同様に、第1波のときに検査能力が限られており、検査対象が主に重症例に限定されていたことが原因と考えられ、検査能力と患者ケアの改善の結果致死率が低下してきています。

このように、徐々に世界は新型コロナに対応できるようになってきていると考えることができます。

私たちはまだ当分の間「新型コロナのない世界」に戻ることはできませんが、感染が拡大しやすい状況、必要な検査能力、有効な治療薬など多くのことが分かってきています。

新型コロナが現れてからずっと大変な状況が続いていますが、こうしたデータから我々は少しずつ良い方向に向かっていることが実感できます。