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インフルエンザワクチンを早く打つべき人は?

忽那賢志感染症専門医
(写真:アフロ)

今年のインフルエンザは2ヶ月早い

今年はインフルエンザが例年よりも早く流行の兆しを見せています。

特に沖縄県では定点あたりの患者報告数が34.72と警報レベルとなっており目立っていますが、東京都も第38週(9月16日から9月22日)の患者報告数が、流行開始の目安となる定点当たり1.0人を超えました。

例年インフルエンザは12月から3月にかけて流行しますが、今年は約2ヶ月早いペースで流行が始まっており早めの対策が必要です。毎年インフルエンザワクチンは12月くらいに打っている、という方も今シーズンは早めの接種をお勧めします。

 東京都福祉保健局 2019年09月26日 報道発表資料より
東京都福祉保健局 2019年09月26日 報道発表資料より

都内におけるインフルエンザ患者報告数(インフルエンザ定点報告)過去5シーズン

インフルエンザワクチンの効果の考え方

私は毎年患者さんにインフルエンザワクチン接種をお勧めしていますが、ときどき「インフルエンザワクチンを打ってもどうせインフルエンザには罹るから毎年打っていない」とおっしゃる方がいらっしゃいます。

確かにワクチンを接種してもインフルエンザになる方はいらっしゃいますが、ワクチンを打っていないヒトよりもインフルエンザにはなりにくいことが分かっています。

例えばですが、ワクチンを打っていない集団300人と打った集団300人とを比べた場合に、その年最終的にワクチンを打っていない集団では100人がインフルエンザに罹ったけど、ワクチンを打った集団では40人しかインフルエンザに罹らなかったという場合に、この60人の差がワクチンの効果ということになります(数字は例えです)。人によってはワクチンの効果を感じにくいことがありますが、広い目で見ればワクチンには間違いなく予防効果があるのです。

また、インフルエンザワクチンは接種することによって、罹ったとしても重症化を防ぐことができます。

10月からインフルエンザワクチンの接種が全国の医療機関で開始されていますが、まずは特に重症化するリスクの高い高齢者、妊婦さん、ステロイドなどの薬を飲んで免疫が弱っている方などはインフルエンザワクチンを接種することが強く推奨されます。

米国疾病予防管理センターの推奨(MMWR Recomm Rep 2013; 62:1.)を元に筆者作成
米国疾病予防管理センターの推奨(MMWR Recomm Rep 2013; 62:1.)を元に筆者作成

インフルエンザに罹ると重症化しやすいためワクチン接種が強く推奨される方

集団免疫とは

またこのような重症化しやすい方と一緒に住んでいる人、接する頻度の高い人も自分の家族や大事な人にインフルエンザをうつさないためにワクチン接種が推奨されます。ワクチンには集団免疫と言って自分がワクチンを接種することによって自分だけでなく周りの人を守る効果もあります。持病のない若い人のワクチン接種率が高い集団では高齢者のインフルエンザ発症率が低くなるとされています。自分のためだけでなく、自分の家族や大事な人を守るためにもインフルエンザワクチン接種しましょう。

(Wikipediaの画像を翻訳)
(Wikipediaの画像を翻訳)

集団免疫の効果

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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