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アップルによる「歯ぎしり」を検知するイヤホンの特許出願が公開

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:米国特許公開公報20220313153

発展途上中で、まだアイデアが出尽くしていないウェアラブル系の世界ではいち早く斬新なアイデアを思い付けば、広範囲の特許が取得できる可能性が十分にあります。先日、アップルによる「歯ぎしり」を検知するイヤホンの特許出願が公開されました。「その発想はなかったわ」という印象です。まさに、イヤホン(イヤーバッド)でなければできない(スマートウォッチやスマートグラスではできない)機能です。

まだ、公開されただけで審査は始まっていません。公開日は2022年10月6日、公開番号はUS20220313153(新しすぎてまだGoogle Patentに掲載されていません)、実効出願日は2021年3月29日、発明の名称は、”DIAGNOSIS AND MONITORING OF BRUXISM USING EARBUD MOTION SENSORS”(イヤーバッドのモーションセンサーを使用した歯ぎしりの診断と監視)です。

経験された方はご存知と思いますが、歯ぎしりは他人に迷惑なだけでなく、それに起因する顎関節症は結構辛いものです。歯ぎしりを診断するためには、筋電形等(EMG)を使った医療機器がありますが、大がかり(通常は入院が必要でそうなると家と環境が変わって症状が出ないといった問題が生じ得ます)、コストが高い、睡眠時しか使えないといった問題がありました。この発明は、歯ぎしりの診断をより簡便に、かつ、起きている時でも測定可能にするのが目的です。

睡眠時でも起きている時でも測定できる点がポイントの一つになっていますが、現在のAir Podが就寝中の使用(いわゆる「寝ホン」)で使いやすいかどうかは意見が分かれるかもしれません。とは言え、別記事で書く予定ですが、アップルはイヤホン内臓のアイマスクの特許も出願していますので、睡眠時用に特化した別のデバイスが出てくる可能性もないわけではありません。

発明のポイントはきわめてシンプルで、顎骨から発生する音をイヤーバッド内の加速度センサーで検知します(タイトル画像参照)。その後、その音をセグメント化し、機械学習により分類し、歯ぎしりであることを判定します。明細書では、被験者に「食べる」「飲む」「話す」「歯磨きをする」などの作業を行ってもらい、「歯ぎしり」と間違えて認識されないよう学習を行う方法などが開示されています(単なる思い付きではなく、製品化に向けた具体的な実験が進んでいることがわかります)。

なお、素人考えですが、呼吸音をモニターすることで睡眠時無呼吸症候群の診断にも使えるのではと思ったりしましたが、明細書に言及はありませんでした。

クレーム1の内容は以下のとおりです。まだ、審査が始まっていないので最終的にどのような形で権利化されるか(あるいは、されないか)はわかりませんが、アップルがどのような権利化を狙っているのかを知る上で一応の参考にはなります。

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弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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