Yahoo!ニュース

マルチプレイヤーゲームで迷惑系プレイヤーだけを組ませるという触れ込みのAmazonの特許について

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:いらすとや

「Amazonがマルチプレイゲームで暴言を吐くなどしてほかのプレイヤーの気分を害する"有毒プレイヤー"同士をマッチングさせる特許を取得」というニュースがありました。「有毒プレイヤー」とは"toxic player"の訳ですが、「迷惑系プレイヤー」とでも言った方が適切でしょうか?

記事中には「マルチプレイゲームを台無しにする”有毒”なプレイヤーをグループ化し、その傾向にあるプレイヤー同士を同じマッチで戦わせる特許」と書かれていますが、これは正しくありません(というか全然違います)。特許明細書には、「そのようなやり方で"有毒"プレイヤーを隔離しようとしても、人により何を”有毒”と考えるかは異なるので実現は難しい(たとえば、下品な言葉を使うのを”有毒”ととらえるがゲーム途中で退出するのを”有毒”ととらえない人もいれば、その逆の人もいる)」と記載されています。実際に特許化されたのは、プレイヤー選択アルゴリズムに関するより広範囲の発明です。

発明のポイントは、マルチプレイヤーゲームで対戦相手やギルドのメンバーをシステムが自動選択する際に、スキル・レベルだけではなく、他の要素、特にプレイヤーの行動履歴に基づいた選択を行うというものです。人によりどのような行動を”有毒”(不快)と考えるかは異なるので、複数パラメーターによる重み付けに基づき、マッチ度を定量化します。これにより、快適なマルチプレイヤーゲーム体験を提供することがこの発明の目的です。

特許番号は、US10807006号、発明の名称は” Behavior-aware player selection for multiplayer electronic games” (マルチプレイヤーゲームにおける行動を考慮したプレイヤー選択)です。登録日は2020年10月20日、出願日は2017年12月6日です。米国外への出願は確認できていません。

クレーム1はシステム・クレームでちょっと構成がわかりにくいので、よりわかりやすい方法クレームの独立クレームであるクレーム5を見てみましょう。

この記事は有料です。
栗原潔のIT特許分析レポートのバックナンバーをお申し込みください。

栗原潔のIT特許分析レポートのバックナンバー 2020年11月

税込880(記事1本)

※すでに購入済みの方はログインしてください。

購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。
弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

栗原潔の最近の記事