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マクセルによるアップルへの特許攻撃で使用された特許を解説する

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

マクセルホールディングス株式会社(CD-R等でおなじみのマクセルの持株会社です)が、米アップルが同社の特許権を侵害していると主張し、米国への製品輸入を求めてITC(米国際貿易委員会)に調査を要請したとのことです(参照記事ITCによる発表)。

ITCへは損害賠償の請求ではできませんが、禁輸(海外からの輸入製品の場合には事実上の差止)に関する決定を裁判よりも迅速に行なうことができるので、特許訴訟に先立ち(あるいは特許訴訟と並行して)戦術的に使われることはよくあります(アップルも対サムスンの訴訟でこの手法を使っていました)

今回使用されたのは以下の5件の特許です。先に書いてしまうと、いずれも比較的権利範囲が広く、かつ、今日の製品で実施してしまいそうな良い特許であると思います(だからこそ訴訟とITCへの申立に使われたのですが)。

1) 7,203,517:モバイル端末の通信インターフェース切替機能の改善

2) 8,982,086:タッチパネルのユーザーインターフェース改善

3) 7,199,821:カメラのホワイトバランス調整の向上

4) 10,129,590:動画表示装置の無線接続制御

5) 10,176,848:動画の頭出しの改善

なお、マクセルは2019年3月に、10件の特許に基づき、アップルに対して特許侵害訴訟を提起(こちらはITCではなく裁判所)しており、2020年7月にさらに5件の特許を追加しているのですが、この5件の特許は今回のITCへの禁輸請求に使用されたものと重複しています。

この記事ではこの5件の特許の中身を見ていきましょう(後日、裁判で最初に使用された残り10件の特許についても解説していく予定です)。なお、これらの特許はマクセル自身が出願したものもありますが(同社のかつての親会社であった)日立製作所の特許がマクセルに譲渡されたものが多いです。いずれにせよ対応する日本の特許がありますので、技術内容を知るためには日本の公報を見た方がわかりやすいでしょう。なお、同じ特許出願でも日本と米国の権利内容が同じになるとは限らないので、権利範囲は米国特許ベースで見ています。

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弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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