アップルの近眼でも使用できるヘッドマウントディスプレイ特許について
私のようなメガネを手放せない人にとって、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)やスマートグラス系のガジェットは、メガネをかけたまま使えるか(あるいはメガネがなくてもクリアーに見えるか)が大きな問題です。私が持っているHMDのOculus Riftは、スペック上はメガネをかけたままでも使えるのですが、実際は鼻かけ部分が痛くなって辛いです。しかたなく昔使っていたメガネのレンズ部分を外して貼り付けることでなんとかしのいでいます。
このようなメガネ族の悩みの種を解決してくれるかもしれない、アップルのHMD関連特許が米国で登録されました(先に書いておくとめちゃくちゃ範囲が広いです)。
特許番号は10,686,922号、発明の名称は” Head-mounted display apparatus for retaining a portable electronic device with display”(ディスプレイを備えた携帯電子機器を保持するヘッドマウントディスプレイ装置)、 登録日はつい先日の2020年6月16日(まだ、Google Patentsには反映されていません)、実効出願日は2008年9月30日です。2008年9月30日の源出願に分割出願を繰り返して12件もの特許がファミリーとして登録されており、今回登録のものはその最新のものということになります(ファミリー内の過去の特許発明の権利範囲についても別記事で解説していく予定です)。
分割を繰り返してきたということはアップルにとっても戦略的重要性が高い特許であると言えます。また、実効出願日が2008年まで遡るということは、新規性・進歩性を否定する先行技術の発見が困難である(無効にしにくい)可能性があります。
ところで、この発明がApple Glassに適用されるかもしれないとの一部報道があるようですが、明細書の内容を見る限り、外界の視界にコンピューターによる映像を重ねて表示するAR式のスマートグラスではなく、OculusのようなVRヘッドセット(外界が直接は見えない)を前提としているように思えます(元々は、タイトル画像でいうと332の空洞部分にiPhoneなどのスマホを挿入するタイプのHMDを想定した出願でした)。無理矢理解釈でARスマートグラスも権利範囲に含められる可能性もなくもないかもしれませんが。
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