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AIを発明者とする特許出願はどんなレベルのものなのか

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
EP18275163公開公報

「AIを発明者とする特許出願、欧州特許庁が認めず」というニュースがありました。「DABUS」(Device for the Autonomous Bootstrapping of Unified Sentience)というAIシステムを発明者として出願されていた特許出願が、欧州特許庁により「発明者は自然人でなければならない」という理由により拒絶になったということです。

仮にAIを発明者とした特許の登録を許してしまうとどうやって権利譲渡やライセンスの意思を確認するのかといった問題が生じますので、少なくとも現時点の法律の枠の中では、発明者は自然人に限るというのは当然と言えましょう。

そもそも、本当にAIシステムがすばらしい発明を行ない、それを特許化したいと考えるのであれば、人間がAIの支援によって発明したということにしてその人間を出願人とすればよいだけの話です。今回の話はどちらかというと宣伝目的で注目を集めるために、わざとAIが発明したという点をそのシステムを開発した企業がアピールしているだけのように思えます。

法律的な議論はさておき、ここで気になるのはAIが発明者としてどのようなレベルの発明ができるのかという点、言わば発明者としての実力です。

音楽等であれば、高度なAIを使うまでもなく、マルコフ連鎖等の確率的なアルゴリズムを使うだけでもそこそこ観賞できる作品(人間が適当に作ったのと同レベルの作品)を創作できてしまうのですが、発明という複雑な精神活動を本当に現在のAIが行なえるのでしょうか?単なる文書解析処理によって、一見それらしい明細書を作ったという話に過ぎないのではないでしょうか?

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弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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