バカッター映像の投稿者はTV局に対して著作権侵害を主張できるのか?
最近問題となっている飲食店やコンビニの店員が商品を使った不快感をもよおす動画をツイッター等にアップしてしまうケース、いわゆるバカッター映像について、以下のようなツイートがありました。
そもそも、テレビ局はツイッター動画の使用に関して投稿主の許可が必要なのでしょうか?一般に、人間の個性が入り込む余地がまったくないような防犯カメラの固定カメラ映像でもないかぎり、動画コンテンツは映画の著作物として保護されます。しかし、著作権法には他人の著作物を自由に使えるケースがいくつか規定されています。今回のケースに最も関係するのは著作権法41条(時事の事件の報道のための利用)でしょう。
条件としては、「時事の事件」、「事件を構成」または「当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる」、「報道の目的上正当な範囲内」、「当該事件の報道に伴つて」等があります。
バカッター映像のニュースでの使用については、飲食店やコンビニが店員の非常識な投稿で多大な損害を受けているという「時事の事件」の報道であり、その「事件を構成する」非常識な投稿とはこういうものであるということを報道するのは「報道の目的上正当な範囲内」と言えるので、41条の規定に合致し、テレビ局は許可なしに映像を利用できる可能性が高いのではないかと思います。
たとえば、災害や交通事故等の被害状況のリアルタイム映像のツイッター投稿も同様です。これらの場合、テレビ局の担当者からツイート主に対して利用の許可を求めるDMやリプライが入ることが多いと思いますが、これはあくまでも礼儀であって、極端な場合、許可なしに使用してしまってもテレビ局が著作権侵害を問われることはないと思われます(追記:と書きましたが、このパターンでの41条適用について専門家の意見は割れているようなのでこの段落の内容のみ取り下げます)。
一方、たとえば、「猫のおもしろ映像」のような投稿は「時事の報道」ではないので、テレビ番組で使う場合には投稿主(あるいは撮影主)の許可を得ることが必要です。また、以前書いたASKA氏の未発表作品をミヤネ屋で公表してしまったケースのように「報道の目的上正当な範囲内」と言えない場合には、当然ながら権利者の許可がない限り著作権侵害となります。
追記:本記事では著作権に関してのみ考察しています。中川淳一郎さんの一連のツイートの最初に指摘されている「テレビ局が報道するからさらに被害が拡大しているのである」という主張はまた別論(かつ正論)であり、テレビ局に道義的な責任なしとは言えないと思います。