松竹の「歌舞伎」商標登録出願問題について(歌舞伎揚とグレート・カブキは大丈夫か)

(写真:アフロ)

「松竹”歌舞伎使用禁止令”でG・カブキや歌舞伎揚どうなる?」というニュースがありました。

...松竹は歌舞伎に関する商標を多数出願しており、興行や演芸の分野でも『歌舞伎』という名称の使用を管理し始めたと説明されました。松竹と無関係の団体は、『歌舞伎』と銘打ったイベントが打てなくなってしまった...

ということだそうです。

まず、上記記事タイトルでも言及されている「歌舞伎揚」と「ザ・グレート・カブキ」について検討しましょう(現実に松竹が権利行使する可能性はないでしょうが)。

まず、お菓子の「歌舞伎揚」ですが、これについては、メーカーの(株)天乃屋が「煎餅」を指定商品にして大昔の1954年(昭和29年)に「歌舞伎」を商標登録していますので、松竹の商標登録による影響はありません。なお、同社は、念のためなのか「歌舞伎揚」も同じく「煎餅」を指定商品にして比較的最近(2017年)に商標登録しています。

プロレスラーの「ザ・グレート・カブキ」については、商標登録はされていませんが、以下の商標法の規定により、本人が使う分には仮に商標的使用であっても商標権の効力は及びませんのでやはり問題ないと思われます(私見ですが「ザ・グレート・カブキ」は著名な芸名であると思います)。

第二十六条 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。

一 自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標(以下略)

これ以外のケースについて見てみましょう。

たとえば、食べ物や飲食店等、演劇に直接関係ない分野での「歌舞伎」の商標登録については特に変わったところはなく、先願で登録できた人が独占権を行使できるだけのことです。「桃太郎」という言葉を選んで寿司屋の商標として出願し、登録した人は、他人が「桃太郎」という寿司屋を営業することを禁止できますが、その「桃太郎」という言葉が「歌舞伎」という言葉に変わっただけの話です。このタイプの「歌舞伎」商標の登録は松竹だけでなく、上記の天乃屋をはじめとした他の企業も行なっています。

問題になり得るのは、松竹が41類の「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営」等の演芸関係の役務(サービス)を指定した商標登録出願(商願2016-061086)を2016年6月6日に行なっている点です。これが登録されると、松竹以外の会社が「歌舞伎」と銘打った興行を行なえなくなる可能性が出てきます。

しかし、当然ながら(指定商品・役務との関係における)普通名称を商標登録することはできません(アルコール飲料を指定商品にして「ビール」を商標登録し、独占できてしまったらどえらいことです)。「歌舞伎」という言葉は、興行の文脈では「日本固有の演劇・伝統芸能の一種」を意味する普通名称として消費者に認識されており、(現時点での歌舞伎の興行をほぼ独占的に行なっているとは言え)松竹の商標としては認識されていないと思います。断定はできませんが、この出願は拒絶(もしくは、演劇関係を削除)になるのではないかと思います。実際、松竹は、英文字のKABUKIを2012年に商標登録していますが、その指定役務も「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」と演劇関係を除くように限定させられています。

上記記事によれば、

「商標出願の背景には、2020年の東京五輪とそれに伴う外国人観光客の増加が関係していると言われています。近年は海外観光客が見たら幻滅してしまいそうな“歌舞伎もどき”の興行が散見される。松竹には五輪前に歌舞伎が誤解されかねないイベントや商品を一掃したい狙いがあるようです」

という事情があるようです。この事情が理解できないことはないですが、商標権でこの目的を達成するのはちょっと難しいのではないかと思います。