ソフトバンクがPepperを立体商標登録したことの意味
ソフトバンクロボティクスグループ株式会が、「人型ロボット"Pepper"の立体商標登録について」というプレスリリースを11月22日に出しています。
立体商標は、立体物をそのまま商標登録できる制度ですが、その登録のハードルの高さにより、大きく2パターンに分かれます。
第1のパターンは、商品と出願対象の立体物が直接関係ない場合、いわば、看板的に立体物を使用する場合です。たとえば、ケンタッキーフライドチキンのカーネルサンダース人形は肉製品等を指定商品とした立体商標として登録されていますが、このパターンの登録は比較的容易です。カーネルサンダース人形は充分周知ですが、たとえば、有名でもなんでもないおっさんの人形を食品等を指定して立体商標として出願しても、登録済の商標と類似でない限り、ほぼ確実に登録されます。
大変なのは、一般消費者が立体商標を商品やその容器の形状そのものと認識する第2のパターンです。この場合には、商標法3条1号3項の「その商品の形状のみからなる商標」としていった拒絶理由が通知され、出願人は商標法3条2号の規定に基づき使用による識別性を立証しなければなりません。場合によっては、さらに4条1項18号(機能を確保するために不可欠な形状)に該当しないこともクリアーする必要があります。
このパターンで登録(使用による識別性の立証)するのが結構ハードルが高いことは何回か記事にしています。
- キッコーマン醤油容器が高いハードルを越えて立体商標登録
- 明治が「きのこの山」の形状を立体商標登録、「たけのこの里」は?(※ まったくの余談ですが、この記事執筆時点では「たけのこの里」の立体商標は未出願だったのですが、その後の5月29日に出願されて現在審査中となっています。)
- お菓子形状の立体商標登録について:「きのこの山」はなぜすごいのか(5/11)。
この第2のパターンで登録できるということは、商標権を得られるということに加えて、その形状が消費者の間で周知になっているという一種のお墨付きを特許庁が出してくれたことになりますので、出願人企業にとっては広告宣伝的な価値もあります。
Pepperに関して言えば、7区分という比較的広い範囲で出願されていました。ロボットと直接関係ない指定商品・役務(たとえば、文房具、電気通信に関する情報の提供等)についてはスムーズに登録されていますが、上記の第2のパターンにあたる指定商品(たとえば、各種人型ロボット、ロボットおもちゃ等)については、出願を分割して別の出願とすることでちょっと遅れて登録になっています。
TVCMの大規模展開等により、消費者の間でPepperの形状がソフトバンクの商品・役務を表わすという認識が一般化していると思いますので、これについては納得の行く結果であると思います(もちろん、この認知度の高さをビジネスとしての結果に結び付けるのはまた別の話ですが)。