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明治が「きのこの山」の形状を立体商標登録、「たけのこの里」は?

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:商標登録6031305号

「"きのこの山"が立体商標に "登録拒絶"乗り越え」というニュースがありました。おなじみの明治のお菓子の形状(タイトル画像参照)が立体商標として今年の3月30日付けで登録されたということです。

キッコーマンの醤油びんの立体商標登録の時にも書きましたが、文字やマークなしに商品やその容器の形状のみで立体商標登録するのはかなりハードルが高く、相当の識別性を発揮していることが求められます。きのこの山について言えば、この形状を見ればほとんどの消費者が「きのこの山」だとわかりますので納得の結果だと思います。

上記記事には2015年8月に商標登録出願して2017年5月に拒絶された(記事中は「却下」と書いてますが正しくは「拒絶」です、却下は手続そのものが認められないこと(料金未納の場合等)を意味します)そうですが、特許情報プラットフォームは拒絶が確定した商標出願はしばらくすると検索できなくなる(不便な仕様です)ので詳細はわかりません。

今回は昨年6月に出願されて今年3月に登録査定が出ていますので比較的スムーズに進んでいます。使用による識別性を立証するための書類を十分に準備して出願に望んだことがうかがわれます。(なお、特許の場合は一度出願により公開されると新規性がなくなりますので、同じ発明での再チャレンジは不可能ですが、商標の場合は状況が変われば再チャレンジにより登録することが可能です。)

ここで、永遠のライバル「たけのこの里」はどうなのかと気になる人は多いと思いますが、現時点では明治によって出願すらされた形跡がありません(過去に出願されて拒絶が確定した可能性もありますが上記の理由により特許情報プラットフォームで検索することは困難です)。理由は不明ですが「きのこの山」と違って、他に類似の形状の菓子が多いため、使用による識別性を立証するのが困難と明治が考えているからかもしれません。

追記:本記事執筆後、5月29日付けで「たけのこの里」の形状も立体商標として出願されていたことが判明しました(参照記事)。

なお、明治による他の立体商標登録としてはちょっとなつかしいサイコロキャラメルやR-1等のヨーグルト類のパッケージ(ただし商品名文字入り)等があります。

出典:商標登録5896099号
出典:商標登録5896099号
弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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