行方が気になるミッキーマウス、トム&ジェリー商標登録出願

出典:商願2017-154028公開公報

昨年のことですが、ツイッターの商標速報ボット経由でなかなかチャレンジャーな商標登録出願を発見しました。

出願人はちゃんとしたデザイン会社のようです(いわゆる商標ゴロ案件ではありません)。この出願が特許庁によりどのように扱われるのか大変興味があるところです。なお、出願人を批判する意図はまったくなく、単にこういう商標登録出願を行なうとどうなるのかを客観的に分析してみたいと思います。

まず、重要な点として商標登録出願の審査では著作権のチェックは原則的にしません(著作権は登録しなくても権利が発生するので網羅的に調べることは事実上不可能です)。ただし、どう見ても他人の著作権を侵害している場合には、運用上商標法4条1項7号(公序良俗違反)で拒絶されることはあります。また、仮に商標登録されたとしても他人の著作権を侵害するときはその商標は使用できません(商標権によって著作権をオーバーライドできるわけではありません)(商標法29条)。

では、この出願中のキャラクターの絵の著作権はどうでしょうか。このタドン目タイプのミッキーマウスは、映画「蒸気船ウィリー」ででてきた絵柄だと思いますが、そうするとその映画の公開が1928年なので戦時加算(約11年)を考慮しても著作権は切れていると思います。トムとジェリーの初登場は1940年なので同じく戦時加算を考慮してもやはり著作権は切れていると思います。しかし、仮に映画の前に作画家が個人名で公開していたりするとその人の死後50年まで著作権が存続する可能性もないわけではありません。ディズニーはミッキーマウスの絵の著作権が切れているかどうかについては明確な立場を表明していないようです(参照Wikipediaエントリー)。ただ、いずれにせよ、他人の著作権を侵害するのは明らかというわけではないので審査段階では著作権についてはスルーされるのではないかと思います。

しかし、仮に著作権問題をクリアーできても必ず商標登録されるかというとそういうことはなくいくつかの関門があります。まず類似先登録商標の問題(商標法4条1項11号)があります。

古いタイプのミッキーマウスの絵が使われた商標登録としては、ディズニーによる登録587092号(昭和37年登録)などがあります。これが、問題の出願のミッキーと類似するかはちょっと微妙なところです。トム&ジェリーの絵についても商標登録(たとえば、第5245974号)がありますので、全体として類似すると判断される可能性はあるでしょう。ただ、仮に類似すると判断されても拒絶の対象になるのは類似商品だけであって、この出願はかなり広範囲に商品を指定していますので、すべての商品について拒絶されることにはなりません。

次に、商標法4条1項10号があります。これは登録がなくても周知性が高い商標であれば類似登録を許さないという規定です。ただし、こちらも類似商品にしか効力が及びません。

十 他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

さらに商標法4条1項15号もあります。こちらは「混同を生じるおそれがある」という要件が加わりますが商品が類似でなくても適用されます。

十五 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)

審査官の考え方による部分が大きいと思いますが、ミッキーマウスもトム&ジェリーも世界的な周知性はきわめて高いので「混同を生じるおそれあり」として4条1項15号に該当するとされる可能性はあるかと思います。

ということで、著作権的にパブリックドメインになっていれば絶対商標登録できるかというとそのようなことはありません。

なお、この出願の出願人はPUBLIC DOMAIN PICTURESのロゴだけで絵がないタイプの出願も行なっています。おそらくは著作権切れの絵を使ったブランドものを展開する予定なのかもしれません。こちらについては、既に類似商標登録があったり、他人の周知商標と混同を招くようなもの等でなければ特に問題はありません(たとえば、モナリザがびっくりしている絵柄の画材屋さんの看板も特に問題にはなっていませんし、商標登録されていたりもします)。