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島野製作所対アップルの特許訴訟はアップルの全面勝利で終結

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

アップルの部品サプライヤーの小規模企業、島野製作所がアップルを電源プラグのピンの構造に関する特許権の侵害で訴えていた件については、以下のように過去に何回か書いています。

既に島野製作所側の勝ち目はない状態だったのですが、先日公開された無効審判の審決取消訴訟の判決文により、島野側はほとんどの主張が認められることなく敗訴した(特許権の無効が再確認された)ことがわかりました。最高裁に上告できないことはないですが、もう道は閉ざされたといってよいでしょう。

一般に、日本では、特許訴訟の原告(権利者側)の勝率が低い(3割程度)と言われており、特に個人や中小企業が原告で大企業が被告というパターンですと権利者側の勝率は1割以下です(ソース:知的財産推進計画2015)。とは言え、実際には原告有利で和解することもありますので、中小企業または個人が大企業を訴えてもまったく無駄ということはありません(個人発明家がアップルから(日本の事例としては)巨額の賠償金を勝ち取った例もあります(参照過去記事))。要は特許がどれくらい強力かです。

今回は、アップルが使用している部材(導電性のキノコ型押付け部材)と元々の特許発明で中心になっていた部材(絶縁性の球状部材)が違いすぎたので、今にして思えばちょっと無理筋の訴訟だったと言えます。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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