JASRACとの公正な競争は可能か?

出典:いらすとや(+筆者による編集)

JASRACが独占的な地位にあることで問題が生じているのではないかとの意見が聞かれることがあります。法律的には、著作権管理事業は2001年から登録制になっているため、JASRAC以外の団体も著作権管理事業を行なうことは自由です。実際、株式会社Nextoneなど、JASRAC以外の著作権管理事業が存在し、市場で競争しています。

しかし、とかく問題とされることが多い演奏権、つまり、ライブハウス、飲食店、コンサート会場等における演奏の管理についてはJASRACの独占状態となっています。

これは別に法律で決まっているわけではなく、演奏権の管理には全国津々浦々のライブハウスや飲食店を回って契約を結ぶことが必要となるため、それなりのマンパワーと拠点が必要であり、それを提供できるのが今のところJASRACしかないというだけの話です。

では、仮に演奏権についても他の著作権管理事業者が対応するようになり、JASRACとの競争が発生することがあり得るでしょうか?あり得ないとは言えないでしょう?ただ、特に演奏権における音楽著作権管理事業は、一般的な商品やサービスの市場とはかなり特性の異なることに注意が必要です。

一般的な商品やサービスの市場であれば、複数の企業が公正な競争をすることで、値段も安くなり、顧客サービスも向上します。顧客を大切にしない企業は市場から淘汰されてしまいます。

しかし、著作権管理事業の顧客には利用者(演奏権の場合には、ライブハウス、飲食店等)だけではなく、権利者(作詞家、作曲家、音楽出版者)も含まれます。仮に、「うちは料金も格安だし、取り立てもそんなに厳しくないですよ」という著作権管理事業者が登場すれば、利用者は大喜びでしょうが、権利者はそんな事業者に自分の作品を預けようとはしないでしょう。

もうひとつの違いは音楽には代替性があまりないという点です。レストランが「Aビールは値引きしないので、Bビールに切り替えました」というのはあるでしょうが、ライブハウスが「レディーガガの曲は使えないので代わりにのビヨンセ曲を使おう」というわけにはいきません。

米国の例を取ると演奏権を管理している団体にはASCAP、BMI、SESACがあります。ASCAP所属のクリエイターにはたとえばスティービー・ワンダー、ビヨンセ等がいます。BMIは、マライア・キャリー、レディー・ガガなどがいます。SESACにはボブ・ディラン、ニール・ダイヤモンドなどがいます。こうなっていると、ライブハウスとしては「うちはASCAPとしか契約していないので、レディー・ガガのカバー演奏やCD再生は禁止です」というわけにはいきませんので、結局3団体全部と契約せざるを得ません。

ということで、著作権管理事業については複数の事業者による公正な競争は可能であるかもしれませんが、少なくとも演奏権については多数の事業者が存在するとかえって不便ですし、どちらにしろ競争により利用料がどんどん安くなる(あるいは取り立てが甘くなる)という形にはならないでしょう。ただ、2つから3つ程度の主力団体が、手数料の削減、権利者への分配の透明性、顧客サービスの向上等をベースに競争するというシナリオは十分に望ましいのではないかと思います。

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事、『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 IT系コンサルティングに加えてスタートアップ企業や個人の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています。お仕事のお問い合わせは http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から。【お知らせ】Skype/Chatworkによる特許・商標の無料相談実施中です。詳しくは上記お問い合わせ先から。

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