西村博之氏が2014年に出願していた「2ch」の文字商標登録出願(商願2014-23406)が拒絶査定の後、不服審判において登録審決を得ました(2016年4月5日付)。あとは登録料だけ払えばこの商標権は西村博之氏のものになります(既に払ってる可能性は高いと思います)。J-PlatPatに審決文が公開されており、「審決速報」メニューから審決番号2015-003736を入力すれば内容が見られます。

2ちゃんねる運営に関する今までの経緯はこちらをご参照ください。ごたごたについての説明は省略しますが、かいつまんでいうと、現時点で一般的に2ちゃんねる掲示板として知られている2ch.netの運営主体は(以下、「現運営会社」と呼びます)は2ちゃんねるの創始者である西村博之ではなく、同氏は現運営会社と対立しているという状況なわけです。

さて、2chという文字商標登録出願は、商標法4条1項10号(他人の周知商標に類似)を理由としていったん拒絶されましたが、不服審判では、2chの周知性は西村博之氏の運営時代に獲得されたものである(”他人”の周知商標とは言えない)として登録が認められました(以下は審決の関連部分の抜粋です)。

本願の指定役務を取り扱う業界においては、「2ch」の文字が獲得している周知性は、該掲示板の開設から本願商標の登録出願時においては、請求人(栗原注:西村博之氏)が運営していたときによるものとしての割合が相当程度高いといえるものである。してみれば、本願商標の登録出願時である平成26年3月27日若しくは査定時及び審決時においては、「2ch」の文字が、他人の業務に係る役務を表示する商標として、需要者の間に広く認識されているものということができない。

なお、この登録審決に対して特許庁が取消訴訟を提起することはできません。

さて、今後考えられるシナリオです。

第一に、現2ch.net運営側がこの商標権に異議申立・無効審判を請求することが考えられます。今回の審判は審査に関する西村博之氏と特許庁との間の争いなので、現運営側は(直接的には)関係ありません(ただし、審査過程で情報提供(刊行物等提供)が行なわれていますのでそれが現運営側によるものである可能性は高いでしょう(おそらく匿名で出していると思いますが))。いずれにせよ、異議申立・無効審判は今回の話とは別です(なお、無効審判は利害関係人のみ請求できますが、異議申立は誰でもできます)。

第二に、西村博之氏が現2ch.net運営側に対して権利行使する可能性が考えられます。しかし、事業譲渡時の契約内容次第ではあるものの、通常は両者合意の下に事業を譲渡した相手に商標権を行使するのは信義則的に許されないと思います。

ところで、西村博之氏は「2ch」とは別に「2ちゃんねる」の文字商標も出願しています(商願2013-8081)。これも、「2ch」と同様に拒絶査定の後に不服審判(2015-003735)が請求されていますが、まだ審決には至っていません。同じロジックで登録されそうな気もしますが何か特別な事情もあるのかもしれません(審判資料は特許庁まで行って有料で閲覧請求しないと見られません)。

追記:ところで、なぜ2013年に出願された「2ちゃんねる」商標よりも2014年に出願された「2ch」商標が先に登録されてしまったかというと、前者は代理人なしで出願されており、特許庁からの補正指令の再送が繰り返されたことで審査が遅れていたためです(後に代理人を指定)。裁判所からの通知と勘違いして無視し続けていたのかもしれません。