ベルギーの五輪エンブレム裁判の状況について(その2)

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

ベルギーのデザイナー、ドビ・オリビエ氏がIOCを訴えた五輪エンブレム訴訟の第1回口頭弁論が現地時間22日に開かれました。どのニュースも、通信社からの情報ベースのようで、同じような断片的な情報しかありません(.beドメインでベルギー内のフランス語ニュースを検索しても同様です)。

基本的には「(お金の問題ではなく)模倣したことを認めさせたい」というのがドビ氏の希望ということは変わりないようです。ただ、前回書いたように「訴えの利益」があるのかという問題はあります(既に使用を中止しているのに差止め請求を行なう意味はないでしょということです)。

この点から見て興味深いのが毎日新聞の記事で、「デザイナー側は、公式エンブレム撤回後もオークションにかけられるなど管理が不十分だとして、『著作権侵害の恐れが消えない』と主張している。」と書いてあります。将来の著作権侵害のおそれを排除したいというのが「訴えの利益」という理屈なのかもしれません。

ここで、「オークションにかけられる」とは、エンブレム使用中止が決まった後にヤフオクに流出グッズが出品されて高額で取引されたというニュースのことなんでしょう。ネット上の小ネタ的な話ですがちゃんとベルギー側にも伝わっているんですね。もし、この行為が、ドビ氏を刺激すると共に訴訟継続の法的根拠を与えてしまったということだとすると、IOC側としては「余計なことしやがって」と思っているかもしれません。

他にも、桝添知事は都が発注した佐野エンブレムグッズをもったいないのでこのまま使うつもりと言いましたし(後に撤回)、グッズを(公式に)オークションにかけて損失を補填すればよいというような意見を述べている人もいましたが、海外とは言え継続中の裁判の対象物件なので、ちょっと不用意な発言だったと言えるでしょう。

さらに、上記の毎日新聞の記事には「デザイナー側が訴訟を続ければ、(IOCは)損害賠償請求も検討するとしている」という他にない情報もあります。根拠のない訴訟は不法行為となり得ますので、訴訟戦略としてはあり得るでしょう。究極の対抗策として、佐野氏が日本で債務不存在確認訴訟(著作権の侵害がないことを確認する訴訟)でドビ氏を訴えるという手もないわけではないと思いますが、さすがに今はそれどころではないと思います。

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事、『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 IT系コンサルティングに加えてスタートアップ企業や個人の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています。お仕事のお問い合わせは http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から。【お知らせ】Skype/Chatworkによる特許・商標の無料相談実施中です。詳しくは上記お問い合わせ先から。

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