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テレワークのマネジメント課題を解決する方法【皆川恵美×倉重公太朗】最終回

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

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長引くコロナ禍や、その前から始まった働き方改革によって、雇用環境が変化しつつあります。政府や大企業も副業・兼業を推進したり、社員を業務委託契約に切り替えたりするなど、これまでの雇用慣行とは違った動きが目立ってきました。労働者の価値観や働くことに対するマインドも多様化してきています。もはや、画一的な指導や研修では、全員のポテンシャルを引き出すのは難しいかもしれません。一人ひとりの力を最大化し、組織としてパワーアップするためには、どうすれば良いのでしょうか。皆川さんとの対談から、上司と部下のコミュニケーションの質を高めるためのヒントを探りました。

<ポイント>

・皆川さんの次の夢は映画監督か小説家

・視聴者が「カケアイ」に望む新機能とは?

・サーベイで忖度が見られるときはどうすれば良いのか

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■一人ひとりがもっている人生の可能性が棄損されることのない社会を作る

倉重:私から最後の質問ですけれども、皆川さんの今後の夢をお伺いしたいと思います。

皆川:夢ですか。これは自由に語って大丈夫でしょうか(笑)。今回の対談はキャリアがキーワードだったと思うので、改めて自分自身を振り返ってみると、20代は3社で会社員として働き、30代のほとんどはフリーランスとして活動して、だからこそ、株式会社KAKEAIというチームを創りました。チャレンジをするにあたっては、学生時代から始まって、人生で関わった方々にさまざまな応援・ご協力をいただいています。

KAKEAIのチャレンジをしながら、60代になるのかもしれませんが、もう一回個人でアウトプットすることに挑戦したいです。

倉重:個人で!そうなのですか。

皆川:もしかしたら、KAKEAIのの活動と並行していくかもしれません。「カケアイ」をご利用していただく中でも企業や個人の働く現場が会見えてきます。いろいろな仕事があり、働き方があり、関わり方があることを学びながら、最後は『半沢直樹』ではないですけれども、仕事に関わる小説や映画を作ることが個人的な夢です。

倉重:なんと、それは面白いですね。そう来るとは思いませんでした。いろいろな事例も見ることになるでしょうし語れることは多くなりそうですね。

皆川:そうなのです。「カケアイ」をご利用の個人や企業の方を通じても、何かに前向きに取り組むことにおいて、「誰かが頑張っている」「このような工夫をしている」と知ることですごく勇気づけられたり、「頑張ろう」という前向きな気持ちになったりすると思っています。本を読むことや映画が好きということもありますが、ストーリーには「日常を肯定する力」「日常を新たな視点で意味づける力」があると思っています。カケアイを通じて個々の特性や状況に合った関わり方を追求していく中で見えてくる世界を基に、自分なりにストーリーを紡いでみたいなと思っています。

倉重:とても面白い夢ですね。サスペンス的になるのか、全米が泣いた系になるのか、すごく楽しみです。あとは、カケアイを通して、こういう世の中にしていきたいというものはありますか。

皆川:KAKEAIは「世界中の人々が、どこで、誰と働こうとも、一人ひとりがもっている人生の可能性が決して棄損されることが無い社会」の実現を目指しています。個々人が自分の可能性をきちんと最大化することによって初めて、組織が成果を出したり、継続性が生まれたりすると考えていますので、ここをきちんと突き詰めていきたいと思っています。

倉重:変なマネジメントで可能性がつぶされないように。

皆川:それはマネジメントする側も一緒なのです。上司も誰かの部下だったりするわけなので。カスケードというか階層的になっている組織だからこそ何かが実現できますし、だからこそ生じてしまう難しさを乗り越えて、一人ひとりがもっている人生の可能性が決して棄損されることが無い世界をつくっていきたいです。

倉重:ちょうど7月に、「実家が全勝したサノ」さんという方と対談しました。その「サノさん」が、一人ひとりの可能性を信じられる社会にしたいと言っていたのです。同じことだと思いました。

「実家が全焼したサノ」さんとの対談

皆川:確かに、通じるところがあるというか、同じことです。

倉重:やはりこのコーナーに出ていただく人は、分野は違っても、同じことを言ってくれます。まさかサノさんと重なるとは思わなかったので、少しびっくりしました。

■視聴者がカケアイに望む機能は?

倉重:では、私からは以上です。あとは視聴者の方を今から入れますので、ご質問にいくつか答えていただいてもよろしいですか。この対談は初登場の荒川賢一さん、お願いします。

荒川:すみません。完全にビールを飲んでいました。

倉重:分かりました。最後に回します。考えておいてください。では、小屋松、いってみましょう。

小屋松:初めまして、小屋松と申します。福岡でソフトウェアのエンジニアをやっています。

皆川:初めまして、皆川です。よろしくお願いします。

小屋松:今日のお話の中では、恐らく上司の方がマネジメントをしやすいようにテクノロジーを使ったソフトウェアを運営していると認識しています。逆に部下から見て、「この上司は扱いにくい」ということもあると思います。正直、よくあるのです。今後の展開として、部下から見た上司像という逆側の視点を持ったソフトウェアなどを開発される予定はあるのでしょうか。

皆川:ありがとうございます。そういうお声をいただくことはありまして、今、カケアイの中でも小松屋さんがおっしゃったようなアプローチを検討中です。具体的にいうと、「部下側からのリクエストをもっと直接的に伝えたい」とか、逆に部下の方から、「上司とうまくやるためにはどうしたらいいのか知りたい」というご要望をいただいています。先日、Interaction Dayというオンラインイベントを開催したのですが、視聴者の方から「上司が大変そうなので、何とかしたいと思っているのですが、何をしていいのか分かりません」という声がリアルタイムで寄せられました。特に若い方で貢献したいという想いで働いている方は、「自分にできることがないか」と考えて模索している方が多いと思っています。

例えばですが、「この辺の特性が少し違うので、このような報告の仕方をするとスムーズかもしれません」とメンバー側へサジェストを出すことなどは、時期はまだお約束できないのですが、検討しています。

倉重:いいですね。それは当然、逆もありますよね。

小屋松:ありがとうございます。あとは、会社ではそうでもないけれど、オンライン上では文面が冷たい日もあるのです。会社だと「久しぶり!」なのに、文面だと「。」で終わるような。

倉重:それはやはり怖く感じてしまったり、冷たく感じたりしますか。

小屋松:なんとなく圧迫感はあったり、「この人は今怒っているのだろうか?」と思ったりすることはあります。そういう時にも「この人がこのテキストのときは怒っていません」といったアシストをしてくれると助かります。

皆川:あはは、それは面白いですね。

小屋松:「怒ってはいないと確認しました」という。

皆川:メッセージの送りての意図と受け手側のインパクトのギャップがうまるといいですよね。メモしていいですか。

小屋松:もちろんです。

倉重:いいですね。影響を与えました。では、ツルさん。

ツル:はい、ツルです。よろしくお願いします。ありがとうございます。

皆川:ご無沙汰しています。

ツル:ご無沙汰しています。僕もコンサルをしています。いくつか気になった点があります。カケアイは、いわゆる1次評価者と、たくさんの部下の人のようなイメージはできたのですが、課長と部長の間や、部長と役員の間でも導入されているところはあるのですか? 結構狭い世界になってしまうのですけれども。

皆川:あります。先ほどお伝えした例でいうと、例えば3年目のメンターの先輩と1年目の新入社員のペアでご活用いただいているケースもあれば、役員と部長、部長と課長、課長とメンバーという組織の階層全てでご利用いただいている企業もあります。システム的には、マネジャーにメンバーを紐付けるというシンプルな形になっています。例えばプロジェクトベースで動いている部署では、1人のメンバーの方が3つのプロジェクトに携わっていて、3人のマネジャーに紐づいているという使い方も可能なのです。

ツル:ありがとうございます。あともう一つ聞きたいのですが、最初からマネジメントに天性のある人や、経験値のある人もいれば、向いていない人もいますよね。向いていないタイプには2つあります。本人がマネジメントに向いていないパターンと、人と人の関係なので「相性が悪くてもう無理です」といったパターンです。そういう例は置いておいて、「皆で頑張って改善しましょう」ということですよね。

皆川:そういう意味でいうと、今のカケアイのサービスとしてのご提供範囲は上司・部下の関わり方の質を高めるためのサポートをするというところです。ただ、おっしゃっていただいたとおり、事業部の責任者などは、組織のパフォーマンスを最大化するためのチーム組成にご関心があったりしますよね。テーマとして、将来的に取り組む可能性はあるかと思いますが、しばらく先になるかと思います。

ツル:ありがとうございました。

倉重:ありがとうございます。では改めまして荒川健一さん、いけますか。

荒川:きちんとメモはしておきましたので、大丈夫だと思います。お話を聞いていて、個人のパラメータを把握できるRPGや恋愛ゲームを攻略するような印象を受けました。ツルさんの話にも出てきたのですが、カケアイと親和性が高いサービスは他にもありますか?

倉重:親和性が高いというのは、どういうことですか。

荒川:カケアイと相性がいいサービスというか、「これとこれを組み合わせたら、もっとうまくいく」というサービスがあれば聞いてみたいと思いました。

倉重:難しい質問ですね。

荒川:それとも、カケアイ一つで何とかなってしまう感じですか。

皆川:必ずしもサービスではないのかもしれないのですが、例えば従業員満足度調査は、半年もしくは、年1回くらいの頻度です。エンゲージメントなどの指標は、半年ないしは年に1回計測して可視化しながら、上司・部下の日常は「カケアイ」でチェックしているという企業もあります。業績やエンゲージメントのようなデータと、日常のデータをクロスで見ると、より実態把握と解決策の解像度が上がってくるのではないかと思います。

荒川:分かりました。ありがとうございます。

倉重:サーベイも毎日ちょっとした質問をするものから、定期的にわりと深い質問をするサービスまであるので、今の話だといろいろなタイプがあったほうがいいということでしょうか。

皆川:「カケアイ」では、月のサイクルで改善やチューニングを回していますが、目的によってはクロスで見ることも有効ですよね。

倉重:毎日「今日の気分はどうですか」を聞くものもありますね。

荒川:あと、これは1 on 1に適したサービスだと思うのですが、「カケアイではできないので、ここは補ってほしい」というコミュニケーションがあれば教えてほしいです。

皆川:今の「カケアイ」は、上司と部下の1対1の関わり方の質を高めることにフォーカスしています。マネジャーの目を補うためにメンバー同士の気づきを拾って届ける機能もありますが、チーム運営という意味でのマネジャーの仕事は別にあります。この辺りは、チームの力を高めるためのナレッジなどを流通させていくところから取り組んでいく可能性はあると思っています。

荒川:すごくよく分かりました。

倉重:ありがとうございました。次はカニの女王様に登場していただきたいと思います。もうYahoo! News対談に出演済みの、カニを30億売る女です。これも皆川さんの将来像かもしれません。

「カニの女王様」との対談

柏:研修会社で経営理念を専門にやっている柏といいます。3,000~5,000人規模の会社で組織サーベイをすると、回答に忖度(そんたく)をしてしまって、名前付きだと平均点が3.5点になってしまうとか、中心に寄ってしまうことがあります。1年目はいいけれども、2年続けて同じサーベイをやると、忖度しまくりの結果が出ることがあるのです。大きな会社や、創業100年の会社などはとくにそうです。こういうときはどうしたらいいと思いますか。

皆川:目的を明確にして、「素直に回答することが、個人と組織の将来につながっていく」と感じられることが重要ですよね。「カケアイ」では、メンバー個人の回答は誰が書いたのか分からないようにしています。マネジャーの行動変化に向けたフィードバックは、必ずしもバイネームではなくても有効です。仮に何かしらの調査、アンケートのような形で答えられている状況であれば、目的とどう使われるかをきちんと丁寧にお伝えして、それを守って運用していくことを文化にしていくと良いと思います。

倉重:ありがとうございます。「カケアイ」は本当に今後の展開が楽しみです。これが流行ると、結果的にいい雇用社会になるのではないかと思います。雇用だけではなくて、人と人とのコミュニケーションがより新次元にいくことが最終形態だと思うので、今後のご活躍を楽しみにしています。

皆川:ありがとうございました。

(おわり)

対談協力:皆川 恵美(みながわ えみ)

株式会社KAKEAI 共同創業・取締役

東京大学卒業後、2002年(株)リクルート入社。(株)セルム・PMIコンサルティング(株)にて管理職育成、組織開発コンサルティングに従事した後、独立し2010年より株式会社ミナイー代表取締役社長。同社を廃業し2018年4月 KAKEAIを共同創業。

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒業後司法試験合格、オリック東京法律事務所、安西法律事務所を経てKKM法律事務所 第一東京弁護士会労働法制委員会外国法部会副部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)理事 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 労働審判等労働紛争案件対応、団体交渉、労災対応を得意分野とし、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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