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ビジネスに効く、笑わせるための9つの技術【西条みつとし×倉重公太朗】最終回

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

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これまで9つのお笑いの技術を伺ってきましたが、一番大事なことは、そのスキルを使いこなす「人間力」です。人としての魅力がないと、そもそも話を聞こうと思ってもらえません。一番大事な「人間力」を磨くためにはどうすればよいのでしょうか? 西条みつとしさんの答えを知れば、新しいことにチャレンジする意欲がわいてくるはずです。

<ポイント>

・思ったことをあえて言葉に出すことで笑いにつなげる

・経験が多い人のほうが魅力的な人間になっていく

・行動したら死にたくなるぐらいまで燃え尽きたほうがいい

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■ボケに対して突っ込む、リアクションの笑い

倉重:8番目にいきます。リアクションの笑いは、いわゆるリアクション芸のようなものですか。

西条:出川哲朗さんやダチョウ倶楽部さんのように、「熱い」「痛い」というのもリアクションの笑いです。お笑いでいうツッコミというポジションは、リアクションの笑いを使っています。ボケの人に対し、リアクションを起こし、笑いを取っているのです。

倉重:「わざとやっている」と思われてはいけないのですよね。

西条:そうです。リアルに反応していると思わせることが必要です。ビジネスでも、心の中で思っていることを、表情や言葉に出さないことのほうが多いでしょう。でも、「それはおかしくありませんか?」と、きちんとリアクションすることで笑いが生まれることもあります。

倉重:思ったことを、あえて言葉に出してみるということですね。確かに、大人の会議では黙りがちな場面もありますけれども、「なぜ黙っているのですか」と、あえて言ってみると、そこから何かが生まれるかもしれません。それも、その状態に対するツッコミということですからね。

■自分がどう見られているかを知り、利用する

倉重:最後は、キャラクターの笑いですが、これは少し難しいですね、キャラを確立している人という話ですか。

西条:キャラを確立させ、自分で利用して笑いを取る手法です。

倉重:周りが自分のキャラを理解している場合ということですね。

西条:そうですね。もしくは、理解させていくときに使います。先ほどおっしゃったように、見た目だけではなく、何かに対して文句を言うのもキャラクターだと思います。

倉重:「期待に応える笑い」とはどう違いますか?

西条:文句を言うキャラクターだとしたら、「文句を言ってほしい」という期待に対して、乗ってあげるのが期待に応える笑いです。「自分は文句を言うキャラクターだ」と周りから思われているなら、それを利用して笑わせます。

倉重:そのためには、自分が周りからどう見えているのかを知っていなければいけませんね。

西条:そうです。分からせる、分かってもらうことが必要です。

倉重:ちなみに、西条さんは周りからどう見られていますか。

西条:見た目のキャラクターはあまりないのですが、内面的なものはあるかもしれません。コミュニティーによって見られかたは違うと思います。僕も劇団のメンバーから見られるキャラクターと、学校の講師をしている時のキャラクターは異なるはずです。

倉重:属しているコミュニティーによってキャラは違いますからね。だからこそ、パラレルキャリアのように、いろいろなコミュニティーでの自分を持っているほうが、引き出しが多くて強いのですよね。

西条:そうだと思います。そちらのほうがうまくやっていけるし、仕事も広がりやすいです。

倉重:自分がどう見られているかを考えるきっかけになりますし、最終的に、「どうありたいか」というイメージづくりができると思います。

■一番大切なのはスキルより「人間力」

倉重:ご著書にあった「笑いの類型」を全部伺いましたけれども、最終的にはそれを使いこなす人間力が大切になりますよね。

西条:そうです。この本の最後にも書かせていただきましたけれども、笑いを取るのに一番重要なのは、人間的な魅力、人間力です。人としての魅力がないと、まずその人の話を聞こうと思いませんし、笑いたい気持ちになりません。そこを飛ばして技術だけ付けても意味がないのです。

倉重:若い人にこのお話をしたら、「人間力はどのようにつけたらいいですか」と聞かれますよね。

西条:いろいろな方法があるかと思いますが、やはり経験が一番身になり、体から出てくるものだと思うので、経験値を増やす事です。本当はしたい事があるけど、「こうなるかもしれないからやめよう」と、リスクや失敗を考えて行動に起こさない人が多いと思います。行動に起こさないということは、経験値を増やさないと言う事です。

倉重:確かに、ずっと家に閉じこもって何もしなければそうなりますね。

西条:ミスをしたり失敗したりすることも経験値になります。経験が多い人のほうが魅力的な人間になっていくのです。

倉重:それが話のネタにもなるわけですからね。

西条:もちろん、成功している人も魅力ですけれども、成功だけしかしていない人よりも、成功と失敗をしている人のほうがもっと魅力的です。いろいろな行動を起こして、誰よりも多く経験を積むことが、魅力が勝手に上がっていく方法ではないかと思います。

倉重:失敗も経験として笑いにできるようになると、その人の人間力が上がったりしますからね。私も高校のときに学校に行かずに引きこもっている時期がありましたけれども、高校に講演をしに行ったときに「私は高校に行っていませんでした」と言って、少し笑いを取っています。苦い経験も人に言えるようになると魅力になるのではないかと思いました。あとは、人を好きになることですね。

西条:そうです。自分が面白いと思われるため、自分の仕事のためだけに笑わせるとなると、本当に滑ります。でも、「相手を笑わせたい」というサービス精神で、相手を楽しませたいとがんばった上なら、嫌な滑り方をしません。

倉重:根底にある思いですね。

西条:「相手のために笑わせたい」と考えていると、笑い自体も魅力的にもなるので、人を好きになったほうがいいと思います。

■自分にあった仕事の見つけ方

倉重:本当にそのとおりです。あとは、全体的な質問になってきますけれども、笑いの感度を上げるためにはどうしたらいいですか。

西条:笑い自体をどんどん好きになっていくことでしょうか。

倉重:楽しむということですかね。

西条:そうすると、勝手にそこに目が行ったり、笑いではない部分でも、「これを笑いにしたい」という思いが出てきたりして、どんどん感度が高まっていくのではないかと思います。

倉重:西条さんはもともと嫌いだった演劇も含めて、今は好きな仕事をされています。「自分に合った仕事の見つけ方」に関して何かメッセージをいただけないでしょうか。例えば、芸人や俳優からも相談を受ける機会が多いのではないかと思いますけれども。

西条:好きなことを仕事にしていくと、好きな事より、やらなければいけないことが増えていきます。

倉重:そうですね、実際に芸人時代は最初そうでしたからね。

西条:それでも大嫌いになるまでは、とことんやったほうがいいと思います。その先に目指したいことは無限に生まれてくるので。まずは絶対に行動をしたほうがいいです。しないことは悪だと思っています。行動したら中途半端でやめずに、死にたくなるぐらいまで燃え尽きたほうがいいです。若いころのほうができることはたくさんあるので、絶対に動いた方がいいと思います。

倉重:人生においてどのような仕事をするかは、多分予想しても仕方がありません。自分の好きなことはもちろん、嫌いだと思っていることも天職になるケースがあるので、まずは死ぬ気でやってみなさいということですね。

■将来の夢は建築家

倉重:では、最後の質問になります。これから映画公開など、大きな話もあるのではないかと思いますけれども。もう少し長いスパンでいうと、西条さんの夢はどういうものですか。

西条:本当にただの夢だけで言うと、建築家になりたいです。

倉重:建築家ですか? 今までの対談は何だったのかという感じになってきました。

西条:自分で発想してものを作るのが大好きなことが分かりました。今、思い描ける最大の夢は何かと考えたときに、自分が死んでも作品が残ることがしたいし、人に関わる作品を作りたいと思ったのです。

建物をデザインして、そこに人が住むとなったとしたら、自分のセンスも残しつつ、死後も人と関われます。昔はそのようなことは無理だと思っていました。けれども、先ほども言ったように、自分が全力でやったら、違うチャンスが得られるかもしれません。あしたやあさって、もう少し未来になったらもっと違う夢が生まれるかもしれない。今の時点ではそれをできたら楽しいと思っています。

倉重:なるほど。実際に舞台でも美術セットを作ったりしますから、関わり方はいろいろあるでしょうね。まさか、そのような夢の話が聞けるとは思いませんでした。20年後には家に関するお仕事をされているかもしれません。それも人生ということで、いい締めではないかと思います。あとは、映画が絶賛公開中ですね。

西条:そうです。僕が監督と脚本をしている映画、『HERO~2020~』が6月19日から公開していて、東京では池袋で、順次全国に広がっていきます。今はコロナの影響があって、お客様は映画館になかなか入りづらい状況ですけれども、先ほども言いましたように、希望に満ちた作品になっていますので、よかったら見てください。

倉重:ありがとうございます。また有料配信や動画配信されたら教えてください。

西条:わかりました。ありがとうございました。

(おわり)

対談協力:西条みつとし(さいじょう みつとし)

1978年4月12日 千葉県出身 映画監督・ドラマ監督・演出家・脚本家・放送作家

TAIYO MAGIC FILM 主宰

2010年3月14年間の芸人活動を辞め、同年4月より、テレビ番組の放送作家として活動。

2012年5月、劇団太陽マジック(現TAIYO MAGIC FILM)旗揚げ。

映画(監督・脚本)

「HERO」監督・脚本(2020年6月)、「blank13」脚本(2018年2月)、「ゆらり」原作・脚本 (2017年11月)、「関西シジャニーズJr.のお笑いスター誕生!」脚本 (2017年9月)

短編映画(監督・脚本)

「JURI」 監督・脚本

映画・受賞歴

「blank13」シドニー・インディ映画祭 最優秀脚本 受賞、「blank13」ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017 大賞(作品賞) 受賞、「JURI」ええじゃないか とよはし映画祭2019 とよはし未来賞(審査員賞)受賞

ドラマ(監督)

「劇団スフィア」(TOKYO MX・サンテレビ・AT-X)第5話・第6話 監督(2019年10月〜)

「面白南極料理人」(BSテレビ東京・テレビ大阪)第4話・第5話 監督(2019年1月〜)

ドラマ(脚本)

「もやモ屋」(NHK・Eテレ)第2回【おもしろい子はいい子?悪い子?】脚本(2019年10月・11月)

「劇団スフィア」(TOKYO MX・サンテレビ・AT-X)第5話・第6話 脚本(2019年10月〜)

「面白南極料理人」(BSテレヒビ東京・テレヒビ大阪)第1〜5話・第9〜12話 脚本(2019年1月〜)

「ブスだって I LOVO YOU」(テレビ朝日)企画・脚本(2018年12月)

「○○な人の末路」(日本テレビ)全10話 脚本 (2018年4月〜)

「オー・マイ・ジャンプ!」(テレヒビ東京)第3話・第6話 脚本 (2018年1月〜)

「下北沢ダイハード」(テレヒビ東京)第1話 脚本 (2017年7月〜)

ドラマ・受賞歴

「面白南極料理人」 ギャラクシー賞 奨励賞 受賞

著書

「笑わせる技術〜世界は9つの笑いでできている〜」(2020年5月)光文社新書

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒業後司法試験合格、オリック東京法律事務所、安西法律事務所を経てKKM法律事務所 第一東京弁護士会労働法制委員会外国法部会副部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)理事 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 労働審判等労働紛争案件対応、団体交渉、労災対応を得意分野とし、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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