テレワークのプロに聞く、生産性を上げる7つのルール【越川慎司×倉重公太朗】最終回

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ビジネスパーソンの中には、「効率よく仕事し、生産性を高めたい」と思っても、社内会議などに時間をとられて作業がはかどらないという悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか? 多数の企業の働き方改革を支援してきた越川慎司さんは、「あるもの」で簡単に改善できると話します。あらゆる会社で使える「会議の時短術」のテクニックを教えていただきました。

<ポイント>

・テクノロジーは主語ではなく、述語

・社内の抵抗勢力をどう変えるべきか?

・会議を60分ではなく45分にする理由

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■最大限世の中に貢献できる道を選ぶ

倉重:越川さんは今、ご自身が望まれている仕事で思いどおりの選択をされていると思います。そういうものに出会って「これだ」と思ったのは、いつごろですか。

越川:働き方を変えようと思った大きな理由の一つは、過去に2度も働き過ぎて体調を崩してしまったことです。それと、PowerPointやExcel、Skypeなどを世の中に浸透させた時に、「テクノロジーは主語ではなく、述語だ」と思いました。マイクロソフトで役員をしていた時に顧客から、コミュニケーションや人間関係の相談が増えてきたのです。「僕が世の中に貢献できるのはテクノロジーではなく、そちらのほうだな」と思って勇気を持ってマイクロソフトを卒業しました。

倉重:それは何歳ぐらいの時ですか。

越川:3年半前ですから、45歳です。

倉重:「メンタル的に少し疲れてしまった」ということだけを見れば、つらい出来事ですけれども、それがあったから今のやりたい事に出会えているということですね。

越川:そうです。最初に起業したのは31歳の時だったので、その時の経験は今も生きています。もっと言うと、NTTでラジオ体操をした経験もすごく生きています。大手企業の抵抗勢力の方々に、たばこ部屋で2時間も説教を受けることもあるのですが、過去の経験があるから共感できる部分もあるのです。「マイクロソフトにいました」というと、よく「外資」と言われるのですが、「NTTでラジオ体操の第2までしていました」と言うと、親近感を持ってくれます。

倉重:いいですね。

私から最後の質問ですが、越川さんはこれからの夢と人生のミッションを教えてください。

越川:起業した目的の一つが、「働く人々が時間から追われる世界を解消したい」ということでした。世の中の会社を全て週休3日にして、給料は変わらない仕組みを作りたいと思っています。週休3日なのに仕事が終わる、業績が変わらない。そうすると社員にとっては給料が20%上がるのと同じなのです。業績は落ちずに、育児や介護、社会貢献できる人が増えることは、社会にとってもマイナスではないですよね。

もし無駄なものをやめて週休3日が実現できれば、会社も個人も社会もみんなハッピーになります。これを実現するためには、意識と行動を変えていかなくてはいけません。多くの企業の方々に「一緒に無駄なものはやめて行動を変えていきましょう」と少しずつ伝えていきたいと思います。

コンサルティング以外で広めるには、僕は書籍の力は大きいと思っていますので、執筆を通じて多くの方々にメッセージを出したいです。今週休3日で時短勤務をしているのですが、今年2月から来年1月まで11冊のビジネス書を出版することが決まっています。これは「週休3日の中で労働時間を増やさずにやる」というミッションを決めてしています。AIが文字を起こすことも経験し、短時間なのに何十万字を出力することを実現しました。

実はアジア向けにも書籍を出す予定です。世界の方々の意識の変えていき、週休3日の企業が1社でも多く増えればと思っています。

倉重:講演をされると、本の内容が出来上がるということですね。

越川:そうです。講演は全てICレコーダーで録音しています。これをAIが文章起こししてくれます。

倉重:うちの事務所も今年いっぱいはテレワークを続ける予定です。秘書の労働時間は半分になったのに、給料は維持しているので、時間単価は倍になりました。

越川:僕は秘書をオンライン秘書サービスに変えました。オンライン秘書はチャットなどで、「これをPowerPointで作っておいて」「スケジュール調整しておいて」と言うとしてくれます。九州に住んでいるらしいのですが、お会いしたことはありません。

■フリーランスは時間ではなく価値を売っている

倉重:では、ご質問がある方は、お願いしたいと思います。

A:私はフリーランスで9年目です。自分自身で労働日数を決められるので、ある種フリーランスは週休3日でも成立するということでしょうか。

越川:僕は「フリーランス」という言葉はもう5年後には使われていないのではないかと思っています。フリーランスは時間ではなく成果を売っている人たちです。アメリカ、北米はそちらの人のほうが多いので、それほど変わった存在ではありません。今回のコロナの影響によって、「大企業」で「首都圏」に勤めていて、「男性」という3つのアドバンテージが薄らぎました。そういった意味では、ギグワーカー、フリーランス、個人事業主といわれる方々は活躍の場が広がっていくと思います。

フリーランスは時間の管理を自分でしています。これはまさに自己選択権を持っている働き方です。おそらく休養や教養などは自分でコントロールされているので、大企業の中で言われた事だけをやる人よりは自立的に学んでいらっしゃるのではないかと思います。

A:ありがとうございます。

倉重:私はフリーランスという呼び方は変えたほうがいいと思っています。どうも非正規のようなイメージがあってですね。もう少しキャッチーな言葉はないものでしょうか。

越川:小池百合子さんがよく使われる横文字のほうがいいでしょうね(笑)。

エリカ:その辺も越川さんに広めていただいて。

越川:親戚がルー大柴さんなので、横文字は得意なほうです。僕の会社名はクロスリバーというのですが、これはルー語で「越川(クロスリバー)」という意味なのです。

倉重:なんと!本当ですか?最後の最後で予想外の話が出てきましたね。ありがとうございます。

■どの企業にも25%は抵抗勢力がいる

倉重:初参加のBさん、いかがですか。

B:ありがとうございます。テレワークの導入を中小企業向けにしています。私も生き方や自己選択権などに燃えるタイプですが、そうではない温度の低い社員さんがいて、「導入をする意味が分かりません」と言われてつまずいています。こういう方にお会いすることや対応方法について教えていただけないでしょうか。

越川:これまで605社の対応をしたのですが、どの企業にも25%は抵抗勢力がいるのです。それは行動を変えない人、成功体験がある人、モチベーションの低い人たちなどです。5人の工務店だろうが、6万人のメーカーだろうが、必ず25%はいます。多くの企業がモチベーションを上げるため、25%の皆さんの教育に投資します。

それは投資対効果がないので、順番が逆です。まず、「働き方を変えたい」「幸せを感じたい」という6~7割の方々を支援して、働きがいを感じてもらいます。雰囲気が変わってきたら、抵抗勢力である方々がたばこ部屋から出てきて「仕方がないな、やるか」と言うのです。これをフォロワーシップと呼びます。なので、意識の高い方々をイノベーターとして増やしていくと会社の雰囲気が変わってきます。残りの25%の人たちは後からついてくるのです。

倉重:最初の人たちに結果を出させるというのが、おそらく大事ですよね。

越川:そうです。それと、僕は抵抗勢力の全てがマイナスではないと思っています。愛社精神が強い人や過去の成功体験が高い人ほど抵抗勢力になります。愛社精神が強いという意味ではポジティブなエネルギーを持っているので、彼らが協力してくれると、すごいパワーになります。少なくとも若い人たちの邪魔はしないでいただいて、「結果が出たら一緒にしてください」と説得していけば、彼らが「仕方ないな、やるか」と言った時のパワーはとんでもないことになるのです。そうすると、労働時間が減ったにもかかわらず利益が上がる会社に生まれ変わるのかなと思います。

B:ありがとうございます。

■会議を時間通りに終わらせるテクニック

倉重:最後に、若手のCさん、いかがですか。

C:今日はありがとうございました。

実際にお話を聞いてみて、私も45分しっかり働いて15分休憩のような、自分で締め切りを決めて働いていこうかと思ったのですが、うちの会社の人ですごく多いのが、時間を守らない人です。会議の始まる時間に来ない。会議が始まっても時間どおりに終わらないので、なかなか一日のスケジュールが立てにくいのです。1時間のミーティングでも2~3時間かかったりすることがあります。そういうおじさんに対してどのようにアプローチしていけば、時間管理がうまくいくのでしょうか。

越川:では、おじさんが回答させていただきます(笑)。実は働く時間の43%が社内会議に奪われています。その会議の中で目的がないものが4割あります。要は椅子に座ることが目的の会議です。

会議には「共有」「意思決定」「アイデア出し」の3種類しかありません。「共有」といわれる多くのものはアジェンダが決まっておらず、集まることが目的です。これは残念ながら意味がないですし、アウトプットは出ません。

解決策として各企業に「60分会議をやめてください」とお願いしています。なぜかというと、60分会議が終わって、次の会議室に移動すると絶対に遅れますよね。もし今後会議を主催する側になったら、ぜひやっていただきたいのは45分会議をデフォルトにすることです。

そうすると、延長しても50分で終わりますから、移動時間もトイレに行く時間も、水を飲む時間も確保できます。そうすると、次の会議にも遅れません。

あと、同じ事を何度も言うおじさんがいますよね。そういう人たちを制するために100円で解決できる方法があります。先ほどご説明したキッチンタイマーです。これを会議室に1個置いておいて、終了の5分前に鳴るようにします。同じ事を言うおじさんたちも、タイマーが鳴ると「これはまずい」と思って、最後の5分間はアウトプットに入ります。

会議は次のアクションを決めないとアウトプットは出ないですから、「残り5分で来週何をするか決めましょう」と言うと、成果が出ます。おじさんたちを黙らせるためには45分会議と100円キッチンタイマーです。だまされたと思ってぜひ試してみてください。

今パナソニックグループはすべて45分会議にしています。会議時間が23%減っただけではなく、アウトプットが出る確率も上がりました。量が改善して質も高まるといった意味では業務改善でやるべきは会議改革です。ぜひ勇気を持ってやっていただければと思います。

倉重:これはいろいろな会社でも当てはまりそうな話だと思います。明日から実践できると思いますのでぜひやってみてください。では、Dさん、すごく何か言いたそうな顔をされていませんか。

D:今日はどうもありがとうございました。とても楽しかったです。私は経営理念などを研究したり人に教えたりしています。日本企業で研修を作っていくと、どうしても「やらせる」などの使役言葉がたくさん出てくるのです。どうしたらすんなりと、「山頂はここだよ」と示すことが浸透すると思われますか。

越川:やはり山に登っていないと頂上には着きません。「散歩していたら山の頂上に着いた」ということはないのが大前提です。僕もそうですが、任せてしまうのは不安です。ですので、クライアント企業に推奨しているのは、「旅のしおり作り」です。山に登る時に今5合目なのか、4合目なのかを確認すること。うちはテクノロジーを使って、ダッシュボードと、今進捗がどれぐらいかというのを1週間に1回は見るようにしています。

例えば「5合目にしてはうまくいっている」と思えばグリーンにします。今は黄色信号だと思ったら、少し背中を押してあげるなど、進捗状況を全員が見える状態にしているのです。登り方は任せますが、「来週水曜までにここまで到達していないと頂上には着かない」ということを可視化して定量的に進めていくと、現場も経営陣も疑いなく任せられます。

D:スコアボードを作って、ぱっと見せられるようにしないと成果は得られないということですね。

越川:そうです。人はA(現在もしくは過去)からB(未来)への変化を数字で表現すると動きます。今本当にBに近づいているかどうかの把握は数字であり、定量的なものです。僕はあまりKPIなどの専門用語は使いたくないのですが、ダッシュボード化して、今どういう状態にあるのか、うまくいっているのか、うまくいっていないのかを腹落ちしながら山登りをするというのが一番です。

D:面白いですね。そこでKPIなどと言うから訳が分からなくなるのですよね。素晴らしい。ありがとうございました。

倉重:あっという間に時間がたってしまいました。とても面白かったです。ありがとうございました。

越川:ありがとうございます。

(おわり)

対談協力:越川慎司(こしかわ しんじ)

株式会社クロスリバー 社長

株式会社キャスター事業責任者

通信会社、ITベンチャーの起業を経て、2005年にマイクロソフトに入社。業務執行役員としてPowerPointやTeamsなどの事業責任者等を歴任。2017年に株式会社クロスリバーを設立、メンバー全員が週休3日・リモートワーク・複業で、600社以上の働き方改革を支援。これまで10冊出版、最新刊は『働く時間は短くして、最高の成果を出し続ける方法』