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働き方と人生を最適化する超ロジカル思考法【勝間和代×倉重公太朗】最終回

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

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経済と効率化のスペシャリストとして知られ、ビジネス本の多くがベストセラーを記録している勝間和代さん。その中の『勝間式超コントロール思考』という本には、身の回りのことを最適な方法でコントロールする意志を持っていないと、自分を都合よく使おうとする仕組みや制度、人に流されてしまうと警鐘を慣らしています。「仕方がない」「我慢しなければいけない」「何とかなる」――こういった言葉を禁句にし、自分の人生を生きるためにはどうしたらいいでしょうか。

<ポイント>

・在宅勤務で生産性を上げるには?

・若者が行くべき会社の見分け方

・与えられた枠からはみ出しても良い

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■最大効率、最高の生産性を出すためには?

倉重:「なぜ海に行くと働き方改革が前進するのか」という勝間さんのインタビューがあったのですが、覚えていらっしゃいますか。

勝間:大自然に触れて人間の原始的な能力を呼び戻すことはとても大事です。オフィスビルの狭いスペースに閉じ込めるのは異常だと思います。

倉重:山や海の見える所で仕事をすると気持ちいいですね。発想もいろいろ出てきますし。

勝間:好きな音楽をがんがん鳴らしてもいいです。

倉重:今の時代はすごくそれがやりやすくなりましたよね。

勝間:特に在宅ではしやすくなりました。

倉重:そういう意味では、働く側も自分が最大効率、最高の生産性を出すために、どうやっていくかを考えないといけないですね。

勝間:自分で考えないとダメです。

倉重:勝間さんならではのテレワークのコツはありますか。

勝間:どれだけ快適な空間を自分でつくるかだけだと思います。

会社にいるよりも生産性が上がるような空間をつくらない限り、テレワークにしても無駄です。

倉重:環境要因が一番大きいですからね。

勝間:パソコンが古いとか、子どもがうるさいとか、いろいろなことがありますよね。

倉重:育児しながらテレワークはちょっと無理ですね。

勝間:オフィスよりも生産性が高い施設に整備できますかという話ですね。

倉重:私も自宅の環境を完全に整えているので、オフィスに行く意味はないなと思っています。あと、在宅勤務中は一人暮らしの人はあまり人と会う機会がなくなって、メンタル的にきついという人がちらほらいます。

勝間:Slackなんかは有名ですが、社内チャットをつくっておくといいですよ。雑談もできますし、仕事について質問もできます。

倉重:常に誰かとつながる感覚を持つということですね。経営者側もそれを意識して、寂しさを感じさせないようにする時代になったのかなと思います。

■これからの時代を生きていく若者へのメッセージ

倉重:この対談では毎回、これからの時代を生きていく若い人に向けてのメッセージをお伺いしています。

勝間:私のお勧めは、成長分野でなるべく中高年がいない分野に行くことです。

倉重:その心は?

勝間:中高年がいると働き方改革が進まないし、無意識に邪魔をしてきます。それこそGoogleなどは社員食堂に行くと30代以下しかいません。40代でも相当年です。

倉重:東大の柳川先生の「40歳定年論」もありましたね。

勝間:年齢を重ねたこと自体には価値もたくさんありますが、若い人への阻害になることは間違いないです。

倉重:どうしてもブロックというか、天井を設けてしまうと。

勝間:やり方も考え方もそうです。なるべく若い成長力がある所に身を投じたほうがいいと思います。

倉重:「中高年が多い会社には行かないようにしよう」と思っている人はいなさそうですね。やはり親を安心させたいから、誰もが知っている大企業に行きたいという人が多いです。

勝間:だいたい泥沼にハマりますね、そんな所へ行くと。優秀な人ほどそういう所に入れてしまうので。

倉重:そうですね。でも、「いざやってみると思っていたことと違った」「面白くないな」ということがあるはずです。

勝間さんの場合は、監査業務をして「違うな」と思ったら、わりとスパッと次に行けたのですか。

勝間:すぐに転職しました。

倉重:資格もありますしね。私も最初の弁護士事務所は、つまらなくて半年くらいで辞めているのです。そういう意味では何か持っていると強いかなと思います。

勝間:半年あれば十分です。私も監査部門に半年いて、「これは無理だわ」ということでコンサルティング部門に移りました。

倉重:勝間さんの今やりたいことは何ですか。

勝間:短時間労働も含めた形で、自己責任で、のんびり家で暮らすライフスタイルを推奨しています。

倉重:その代わり責任もきちんと負うということですね。

勝間:短時間労働で報酬が出ればいいと。

倉重:多くの国民がそうなるのがすばらしいことですよ。

勝間:みんな競争を嫌い過ぎますよ、成果報酬とか。

倉重:抵抗感を示す人が多いですね。

勝間:短時間労働にしようと思ったときに、成果報酬より競争のほうがよほど楽です。

倉重:楽というのは、勝てるからですか?

勝間:勝てるか勝てないかは分かりませんが、少なくとも成果が目の前に見えます。

倉重:対応関係がクリアだということですね。

勝間:勝てない市場もたくさんあります。私はトレーダーの市場は全く勝てませんでした。でも、私たちは市場を選ぶ権利もあるわけですよ。

倉重:「苦手な市場で戦わない」ということですね。

勝間:そうです。自分で会社を選ぶことに対しての感覚が鈍いのです。生まれ持った資質、才能はあまり変わらないので、「努力しなくても成果が出るところ」という表現をしています。

倉重:そういう発想になるためにはどうしたらいいでしょうか。

勝間:みんな真面目過ぎますね。あと、自分のことを信じ過ぎています。私は自分のことを信じていないですから。能力など磨いてもたいして上がらないと思っていますし。

倉重:そうですか、すごく自信あるのかと思っていました。

勝間:だって、嫌いなものを好きになれるわけがないのです。1人でやれるものを10人でしたら、絶対何でもうまくできますよ。なぜかみんな1人でやりたがります。

倉重:自分1人でできることなどはたかが知れていますからね。

勝間:そうです。だから、もっと人にがんがん聞いたほうがいいです。

倉重:ちなみに、勝間さん流のメンタルのコントロール術はありますか。

勝間:よく眠れたらだいたい大丈夫です。毎日必ず7~8時間は寝ています。

倉重:徹夜で仕事されることはないのですか?

勝間:どんなに忙しいときにも、最低でも5~6時間は寝られるようにスケジュールを組みます。

倉重:私も、期日が迫っている書類は、6時間寝ることを考えて、逆算して作成します。睡眠が足りていないと、1週間で見たときの効率が落ちますからね。

勝間:その通りです。

倉重:ラストに勝間さんの夢をお伺いしたいのですが、夢は何ですか。

勝間:夢というとあまりにも漠然とし過ぎて。キャリアドリフトと一緒で、今から5年後、10年後の夢など突然出てきません。うまくやったら次が出てくる、何かやったら次が出てくるという形でいいと思っています。

倉重:先ほどおっしゃった超効率、超短時間で家庭生活を楽しむ社会にするためには?

勝間:社会の不平等を直したいと思っています。世の中、いろいろなところで腹が立つほど不平等ですから。そこに関して、なるべく声を上げていきたいです。いくつかボランティア活動の代表をしていますし、地道に続けています。ただ、ボランティアはお金がもうからないので、活動の主軸にするとゆがんでしまうのが少し怖いです。

倉重:他にきちんと稼ぎがあるからボランティアできるわけですからね。

勝間:そういうことをできるぐらいの時間や気持ちの余裕を常に持っていたいなと思っています。

倉重:余裕を失ったらダメですね、ボランティアにしても。

勝間:そうです。あと、本は年に2~3冊コンスタントに出していきます。それをみんなに読んでもらって、「生活が良くなった」とか「人生変わりました」と言ってもらえたらすごくうれしいなと思います。

■与えられた枠の中からはみ出しても良い

倉重:ありがとうございます。私からは以上です。あと1~2点、観覧者から質問募ってもいいですか。最初、Aさんいきましょう。

A:お疲れさまでした。きょう久しぶりにお話を伺って、「仕事と上司は替えられる」という持論が新鮮でした。自分も含めて、日本のトラディショナルな企業でずっと働いていると、何でそこに思い至らないのだろうと不思議です。どうしてだと思いますか。

勝間:洗脳ですよ、洗脳。仕事や上司に追い詰められているから視界が狭くなっていて、その中で何とかするしか生きるすべがないように思えるわけです。

DVをされている奥さんと同じかな。

A:それに近いかもしれません。いざ「仕事と上司は替えられる」とか、「自己責任で生きていくほうが楽だ」ということを味わってしまうと決して戻れないのに、なぜそこへ来るまでにすごい障壁があるのか疑問でした。

勝間:親を選べないし、学校も1回入ったら自分の意思では変えられないので、その癖だと思いますよ。

倉重:親と学校の教育は大きいですね。

勝間:大きいです。「与えられた中で頑張れ」というのが、ものすごくメンタリティーに染みついているわけです。環境そのものを自分で変えられることに気づくと、ずいぶん変わると思います。

A:私もそうでしたが、残念ながら多くの人は、会社が倒産したとか、大けがをした、病気になったという人生の目覚まし時計が鳴ってから、仕方なくトランスフォームします。それはもったいないですね。

勝間:今回、そういう意味でコロナは良くも悪くもきっかけになりました。コロナが入ってきてピッと変わったのて。

倉重:では、次はカワモトさんお願いします。

B:きょうはありがとうございました。私ごとですが、父が経営している事務所に入っています。「父がしてきたことを踏襲しないといけない」という頭でしたが、お話を伺って、「変えてもいいんだ」という勇気をいただいた気がしました。

私より年上の人もたくさんいるので、若干やりづらいところもありますが、世代的には真ん中でやれる状態です。これも運命かなと思って、きょういただいたお話を糧に、変えるべきところは変えていきます。

質問ではなく感想でした。ありがとうございました。

倉重:最後にCさん。

C:今日はありがとうございました。

勝間さんが思う、「若いうちにこれをやっておけ」ということはありますか。

勝間:若いうちにたくさん失敗しておいたほうがいいです。

いろいろやって、つまずいて、ぼろぼろになりながらも前に進んでいくと、「失敗がこんなに楽しいんだ」と思うはずです。

失敗を避け続けては40代とか50代になると死にますよ、本当に。

ただ、失敗を2回、3回繰り返すのはバカなので、1回ぐらいまで。

C:1回まではやってみて、2回目からは繰り返さないようにという感じですね。

倉重:私は高校時代に失敗して引きこもったりしたので、人に優しくしようというふうに思えて逆に良かったなと思っています。

ちょうどお時間になりました。勝間さんどうもありがとうございました。

勝間:ありがとうございました。

(おわり)

対談協力:勝間和代(かつま かずよ)

経済評論家、中央大学ビジネススクール客員教授。

早稲田大学ファイナンスMBA、慶応大学商学部卒業。

当時最年少の19歳で会計士補の資格を取得、大学在学中から監査法人に勤務。

アーサー・アンダーセン、マッキンゼー、JPモルガンを経て独立。

現在、株式会社監査と分析取締役、国土交通省社会資本整備審議会委員、中央大学ビジネススクール客員教授として活躍中。

ウォール・ストリート・ジャーナル「世界の最も注目すべき女性50人」選出

エイボン女性大賞(史上最年少)、第一回ベストマザー賞(経済部門)、世界経済フォーラム(ダボス会議)Young Global Leaders

少子化問題、若者の雇用問題、ワークライフバランス、ITを活用した個人の生産性向上、など、幅広い分野で発言をしており、ネットリテラシーの高い若年層を中心に高い支持を受けている。Twitterのフォロワー61万人、FBページ購読者4万6000人、無料メルマガ4万7000部、有料メルマガ4000部などネット上で多くの支持者を獲得した。5年後になりたい自分になるための教育プログラムを勝間塾にて展開中。著作多数、著作累計発行部数は500万部を超える。

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒業後司法試験合格、オリック東京法律事務所、安西法律事務所を経てKKM法律事務所 第一東京弁護士会労働法制委員会外国法部会副部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)理事 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 労働審判等労働紛争案件対応、団体交渉、労災対応を得意分野とし、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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