人生を変える7つのスキル【豊田圭一×倉重公太朗】最終回

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株式会社スパイスアップ・ジャパン 代表取締役の豊田圭一さんと倉重公太朗の対談、最終回。これまでの集大成として、「自分を知る」「相手を知る」そして「相手から信頼を得る」という話をしていただきました。対談の中には、これからの不確実な世界を生き抜くためのヒントが散りばめられていました。

<ポイント>

・西洋の最先端の授業が取り入れる東洋のエッセンス

・与え続けている人にチャンスが訪れる理由

・「世界の人に発信したい」豊田さんの新しい夢とは

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■グローバルマインドセットと武士道は同じもの

豊田:スペインの大学院の授業では、禅や仏教やマインドフルネスなどがやたらと出てきました。

『五輪書』まで教科書に出てくるのです。

「ファイブリングス バイ、ムサシ・ミヤモト、侍ソルジャー」と英語で書かれていました。

英文をずっと読んでいる中に突然出てくるので、最初は宮本武蔵とリンクしませんでした。

武士の平常心、不動心の話で、『五輪書』は禅の話です。

「いかに心の平静を保つか」「いかにいつもどおりでいられるか」という意味では、グローバルマインドセットと武士道は同じだと思っています。

倉重:豊田さん自身は、今禅やマインドフルネスをしているのですか。

豊田:僕は、ムービングゼン、「動く禅」と呼ばれる合気道をやっています。

倉重:合気道はムービングゼンというのですか。

豊田:合気道や空手は、英語でムービングゼンと呼ばれています。

自分の軸をぶらさない。

心の平静を保って、相手と対峙(たいじ)することがすごく重要です。

倉重:それがもうマインドフルネスなのですね。

豊田:合気道そのものが、僕にとってはマインドフルネスと思いながらしています。

倉重:通じるものがあるのですね。

豊田:スペインの僕の指導教授から「今学んでいる世界最先端のリーダーシップトレーニングと合気道の稽古には共通点がある」と言われて。

その共通点を探ることを、僕の修士論文のテーマにしました。

何か形を教わるだけではなくて、まず自分を知ること。相手をじっくり見て覚えることなど、合気道の稽古の中にある要素と、リーダーシップトレーニングにある要素にはすごく共通点がありました。

それを修士論文として書き、今でも実践しています。

倉重:毎週合気道をしているのですか。

豊田:日本にいる時は週3回です。

今日の夜も行こうと思って、会社には道着を持ってきています。

倉重:禅や合気道はもともと日本にあったものですが、その精神性は現代ではかなり失われてきていますよね。

豊田:そうなのです。スペインや欧米のリーダーシップの勉強の中には、仏教や禅やマインドフルネスなどの要素がたくさん出てきます。

「すごく日本的だな」とか「東洋的で僕にとっては違和感がないな」と思うのですが、日本に帰ってきて、「○○道をしていますか?」というと、ほとんどの人がしていません。

インド、中国を経て、日本にやってきた東洋の知恵にもっと触れたほうがいいとすごく感じています。

とくに大人は「○○道」をしたほうがいいですね。

倉重:個人的に、豊田さんはそれをサウナでしているのかなと思っていました。

豊田:サウナ道、略して「サ道」ですね(笑)。

倉重:あれもマインドフルネスかなと思います。

豊田:禅の瞑想は、「今ここに集中する」ということですが、多分サ道にはそれがあるのです。

倉重:わかります。

目の前の砂時計に集中して、落ちていく砂だけを見ていたりします。

豊田:まさにマインドフルネスですね。

■信頼がなければ、人はついてこない

倉重:最後に今までの6つのスキルを生かして、最終的には「信頼を得る」というフェーズになっていくのが、7つ目のスキルとして書かれています。

信頼を得るのもスキルなのですね。

豊田:これだけが、ページ数の問題もありますが、あまり書けませんでした。

なぜなら当たり前のことだからです。

裸の王様には誰もついていきません。

お客さんが信頼しなかったら仕事になりませんよね。

力をつけても、相手から信頼が得られなかったら何も始まらないので、最後に持ってきました。

倉重:なるほど。

豊田:それと、僕がスペインの大学院で「このようなことをしたいのだけれども、誰かできる人はいませんか?」と聞いたら、「俺に任せてくれ」「いつでも頼ってくれ」とたくさんのクラスメートが言ってくれました。

そう言われると、その人についていきたくなると知りました。

これが一番重要なことではないでしょうか。

倉重:たしかにそうですね。

豊田:また「信頼」とは相手からの信頼だけを指しているのではありません。

自分への信頼、つまり自信もすごく重要です。

「自分はできる」という自信がないと、できるかどうかわからないことに対して、最初の一歩が踏み出せません。

倉重:あとは、「見返りを期待することなく、与え続けている人にチャンスが訪れる」という話にすごく共感しました。

豊田:間違いないですね。

僕はgive and takeという言葉があまり好きではありません。

give and takeは当たり前といえば当たり前です。

そもそも takeを前提にしたgiveというのが嫌なのです。

倉重:takeは結果論ですからね。

それが目当てだとすごく嫌らしいですし、「人づき合いもお金が目当てか」ということになってしまいます。

豊田:本当にそうなんです。

だからgiveをし続けることによってtakeできるのではないかなと僕は思っています。

倉重:この本には豊田さんが今までしてきたことや心掛けてきたことが、おそらく凝縮されているのだろうと思います。

豊田:僕らは1人で生きているわけではないということですね。

「いや、俺は1人で生きているよ、他人の助けを得ていないよ」という人には、「ではその服、脱いでもらっていいですか。その服は誰かが作っているのですよ」と言いたいです。

「病気になったらどうするんですか。医者に絶対にかからないつもりですか」と聞きたいですね。

誰かと共に生きているから、人のことを考えなければいけないのです。

自分を知る、相手を知る、そして相手から信頼を得ると、全てがつながっていくなと思います。

倉重:いい話ですね。

毎回聞いているのですけれども、また改めて、豊田さんの今の夢をお聞かせください。

豊田:僕は今「夢の中で生きている」と思っています。

10年後どうしたいではなくて、今夢の中で生きていることが、うれしくてありがたいのです。

一生懸命していることが僕の未来をつくります。

運命は結果論でしかありません。

運命は過去にあって、未来にはないと思っています。

結果的に「そういう運命だった」と過去を振り返った時に思うものです。

倉重:わだちですからね。

豊田:だけど、最近新たな夢が生まれたのです。

スペインの大学院に行ったことで、西洋の最先端プログラムが東洋のエッセンスを取り入れていることを知りました。

僕たちはその東洋に住んでいます。

ありがたい環境にいるので、日本から発信して、世界の人たちにヒントを与えたいと思いました。

まだ明確なものはありませんが、日本人として、ビジネスパーソンとして、「このようにしたらいいのではないですか」と世界に提案したいのです。

マインドフルネスだけではなくて、何かできないかなと今すごく考えています。

倉重:「○○道」の蓄積がある日本だからこそ、できることがありますよね。

豊田:そう思います。

すでにマインドフルネスも浸透しているし、ヨガも世界中でしています。

茶道の世界にもプロがいます。

ですが、自分が世界に対して訴えられる何かを広めていきたいです。

その結果、世界が平和になるとか、個々の対立がなくなればいいなと考えています。

倉重:常にやりたいことを追求していると、また面白いことが出てきて、そちらに流れていくものです。

今豊田さんの羅針盤はそちらに向かっているということですね。

どうもありがとうございました。

■観覧者からの質問タイム

倉重:あとは観覧者からご質問を承りたいと思います。

A:自分がしてきたことと同じで大変共感しましたし、頭の中を整理させてもらいました。

とくに最初の「すぐやる」は、私もモットーにしています。

やはり相手からのいろいろなアクションに対して、すぐに打ち返したいのです。

楽になりたいというのも全く同じで、その後の話も、全部つながりました。

どちらかというと、「自分の強みを知りたい」と思っていましたが、弱みを知ることも大事だなと改めて思いました。

自分が感じてきたことや実践してきたことが、豊田さんの口から語られていたので、すぐにこの本を買います。

今のお話のエッセンスもぎゅっと詰まっていると思うので、読んで参考にしたいです。

豊田:ありがとうございます。

「センスよりスキル」というと、何か資格などのスキルに思えてしまうけれども、言い方を換えると、これもマインドセットなのです。

意識してマインドセットできるようになれば、それはスキルと言ってもいいと思います。

倉重:これからの不確実な世の中を生き抜くヒントがあるということですね。

ありがとうございました。

では次の方。

B:私は逆に自分にないものだらけだと思いました。

一番欠けているところが「すぐやる」ということです。

いつも考えこんだり、抱え込んでしまったりしています。

一番自分が気にしているところだったので、即買って、読ませていただきました。

私もスキルのイメージが変わったのですが、タイトルへのこだわりはありますか?

豊田:スキルといっても、広義の意味でとらえたいと思ったのです。

広義に捉えたら、マインドフルネスはスキルですよね。

how toだから、誰でもできます。

あれをセンスとは言わないですよね。

倉重:確かに。知らなければできない、やればできるという話です。

豊田:でも、瞑想したら心が落ち着いたり、寿命が延びたり、ポジティブになる効果が事実として出ているわけです。

それをセンスと言うのはちょっと嫌だなと思って、このタイトルにしたのです。

それが嫌で買わない人も出てくると思いますが。

倉重:でも、これで救われる人もいると思います。

「センスがないから」という人に対して、「いやそんなことを嘆く必要はない。大事なのはスキルだ」と教えてくれるのですから。

ありがとうございました。以上で終了したいと思います。

豊田:ありがとうございました。

(おわり)

対談協力:豊田圭一(とよだ けいいち)

1969年埼玉県生まれ。幼少時の5年間をアルゼンチンで過ごす。92年、上智大学経済学部を卒業後、清水建設に入社。海外事業部での約3年間の勤務を経て、留学コンサルティング事業で起業。約17年間、留学コンサルタントとして留学・海外インターンシップ事業に従事する他、SNS開発事業や国際通信事業でも起業。2011年にスパイスアップ・ジャパンを立ち上げ、主にアジア新興国で日系企業向けのグローバル人材育成(海外研修)を行なっている。その他、グループ会社を通じて、7ヶ国(インド、シンガポール、ベトナム、カンボジア、スリランカ、タイ、スペイン)でも様々な事業を運営。18年、スペインの大学院 IEで世界最先端と呼ばれる “リーダーシップ” のエグゼクティブ修士号を取得した。最新作「人生を変える単純なスキル」など著作多数。