新型コロナの後遺症が問題に

新型コロナの後遺症についていろいろな報道があります。中等症や重症の新型コロナにかかってしまうと、退院しても後遺症のためしばらく外来通院を要することもあります。私の外来にも、1年前に重症だった患者さんがまだ通院しています。

もちろん、後遺症を残さず軽快する人もたくさんおられます。報道バイアスが強くかかっていますので、「新型コロナにかかると全員が後遺症で苦しむ」といった極端な解釈をしないよう注意が必要です。「新型コロナを恐怖に感じる人が増えて、結果的にワクチン接種や感染対策が進むことから、過剰に報じるくらいがちょうどよい」という意見は、一理あるかもしれません。しかし、それは科学的な議論とは別であるべきです。

新型コロナの後遺症を残しやすいのは、以下のような人たちと言われています(図1)(1,2)。また、新型コロナワクチンを接種した人では、たとえ新型コロナに感染したとしても、後遺症が少なくなることが示されています(3)。

図1. 後遺症を残しやすい人(シルエットイラスト、Ebina.POP広告より使用)(参考資料1-3を参考に筆者作成
図1. 後遺症を残しやすい人(シルエットイラスト、Ebina.POP広告より使用)(参考資料1-3を参考に筆者作成

後遺症外来を開設する病院が増えてきましたが、どこを受診してよいか分からない場合は、厚労省のサイトに都道府県ごとに相談窓口が記載されているため、参照してください。

さて、「新型コロナワクチンを接種すると後遺症の症状が改善する」という話を耳にします。本当でしょうか?

新型コロナワクチンが後遺症を改善するというデータ

後遺症がある人の研究では、新型コロナワクチンを接種した44人と、未接種の22人を比較すると、未接者と比べて接種者では8ヶ月時点で後遺症が有意に軽減していたと報告されています(4)(査読前論文)。症状が改善したのは接種者23.2%、未接種者15.4%でした(図2)。しかし、未接種者の改善が自然軽快とするなら、ワクチン接種によって上乗せされた改善はそこまで多くないのかもしれません。

図2. 後遺症が改善した比率(参考資料4より引用)
図2. 後遺症が改善した比率(参考資料4より引用)

実際、この研究においてクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)を評価したところ、差はありませんでした。「ワクチンを接種すれば後遺症が治る」と断言してしまうには、説得力が弱いです。

また、LongCovidSOSというグループの研究がプレプリントサーバーに掲載されています(5)(査読前論文)。ワクチンを接種した後遺症患者さんの57%で症状の改善がありました。高い割合で後遺症がよくなっているようです。しかしこの研究、未接種者と比較検討したわけではないため、本当に新型コロナワクチンのおかげだったのかどうか、判断が難しいところです。

神経系後遺症(ブレインフォグ[記憶障害や集中力低下]、倦怠感、頭痛、めまい、不眠など)がある56人と、感染既往のある無症状者24人と、感染既往のない無症状者31人において、T細胞から分泌されるインターンフェロンγを測定した研究があります(6)(査読前論文)。これによると、とりわけ2回の新型コロナワクチンの接種後においては、神経系後遺症がある人でインターフェロンγの量が多いという結果でした(図3)。感染後長期間にわたりウイルスが体内から除去されていないという見解もあるため(7)、免疫応答が強くなって後遺症が改善する可能性があります。

図3. 患者の免疫応答(参考資料6より引用)
図3. 患者の免疫応答(参考資料6より引用)

査読前論文が多く現時点では憶測の域を出ない印象ですが、新型コロナワクチンによって本当に後遺症が改善するのか、現在イェール大学において臨床試験が進められています(8,9)。

ちなみにアメリカ疾病予防管理センター(CDC)では、「新型コロナワクチン接種後に後遺症が改善したというメディア記事があるが、これについては研究が必要」と明言しています(10)。

過去に新型コロナに感染した人もワクチン接種対象者

新型コロナにすでに感染した回復者も、ワクチン接種対象者です。自然に感染するよりもワクチン接種の方が新型コロナウイルスに対する血中の抗体価が高くなることから(11)、厚労省でも感染者に対するワクチン接種を推奨しています(12)(図4)。

図4. 厚生労働省新型コロナワクチンQ&A
図4. 厚生労働省新型コロナワクチンQ&A

ワクチンを1回接種した後にブレイクスルー感染した後の2回目および3回目の接種、2回接種した後にブレイクスルー感染した後の3回目のブースター接種、などいろいろな場合分けを想定する必要がありますが、基本的に「過去に感染した人は非感染者と同じように接種したほうがよい」と理解してよいと思います。

例外として、新型コロナの治療に抗体カクテル療法などの抗体薬を使用した場合、新型コロナワクチン接種は治療後少なくとも90日あけたほうがよいとされています。

(参考)

(1) Huang C, et al. Lancet. 2021 Jan 16;397(10270):220-232.

(2) Sudre C, et al. Nat Med. 2021 Apr;27(4):626-631.

(3) Antonelli M, et al. Lancet Infct Dis. 2021; DOI:https://doi.org/10.1016/S1473-3099(21)00460-6

(4) Arnold D, et al. medRxiv 2021; DOI: 10.1101/2021.03.11.21253225.

(5) Strain W, et al. (URL:https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3868856.

(6) Visvabharathy L, et al. medRxiv. 2021; DOI: 10.1101/2021.08.08.21261763.

(7) Arnold C, et al. Viral Immunol. 2021 Sep 3. doi: 10.1089/vim.2021.0126.

(8) Yale COVID-19 Recovery Study(URL:https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04895189

(9) Akrami A, et al. medRxiv 2021; DOI: 10.1101/2021.07.21.21260391

(10) Post-COVID Conditions(URL:https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/long-term-effects/index.html

(11) Widge A, et al. N Engl J Med. 2021 Jan 7;384(1):80-82.

(12) 厚生労働省新型コロナワクチンQ&A(URL:https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0028.html