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ZARAのインディテックス社 2021年度売上高は36%増の2兆9700億円で着地 EC化率25%超

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
(写真:ロイター/アフロ)

INDITEXの2021年度決算のポイント

・売上高は35.8%増の227億ユーロ(約2兆9700億円)

・オンライン売上高は約75億ユーロ(約9800億円)で、EC化率が25.2%に

・オンライン来訪者は62億人、SNSフォロワーは2億2800万人に

・226店舗をオープンし、期末店舗数は6477店舗に

・スペイン本社敷地内に300億円超投じ「ZARA」向けの新社屋を設立へ

「ザラ」(ZARA)を擁するインディテックス(INDITEX)社は、2021年度決算(2022年1月期)で、売上高が前期比35.8%増の227億2000万ユーロ(約2兆9778億円)と3兆円目前まで成長した。オンライン販売は2020年度に前期比77%増を遂げ、2021年度はさらに14%伸ばし、75億ユーロ(約9829億円)となった。これは総売上高の4分の1を占めるもので、EC化率は25.5%まで上昇した。2024年度にはEC化率が30%に達する見込みで、「eコマースにおけるグローバルリーダーとしての地位をより強固なものにした」と同社。

売上総利益率は57.1%と、過去6年間で最高水準を記録。収益は現地通貨ベースで3%増(純収益ベースでは2%減)となり、2019年の収益を上回った。EBITDAは71.8億ユーロ(約9409億円)、EBITは42.8億ユーロ(約5609億円)となり、それぞれ前年比57.8%増、184.2%増に。純利益は32億4000万ユーロ(約4247億円)となり、前年比193%増の高い伸びを記録した。

Inditexアプリはアクティブ会員数が1億4600万、ソーシャルメディアのフォロワーは2億2800万人となり、オンラインプラットフォームの訪問者数は13%増加し62億人となった。

サステナビリティ関連では、使用エネルギーのうち再生可能エネルギーが91%に達した。より持続可能な原材料を使用する「ジョインライフ」(Join Life)ラベルの商材のシェアは全体の47%になり、目標を7ポイント上回った。

決算会見に登壇した、オスカル・ガルシア・マセイラスCEO(左)とパブロ・イスラ会長  写真はインディテックス公式
決算会見に登壇した、オスカル・ガルシア・マセイラスCEO(左)とパブロ・イスラ会長  写真はインディテックス公式

自社の強みを、「適応性の高いビジネスモデル」と紹介。パブロ・イスラ(Pablo Isla)会長は、「2年間のパンデミックの後、この一連の結果は、ここで働くすべての人々を特徴付けるあらゆる状況に適応する驚くべき能力を示しており、彼らのコミットメントと才能から生まれています」とコメント。

昨年11月にCEOに就任した、オスカル・ガルシア・マセイラス(ÓscarGarcíaMaceiras)CEOは、「この数年間、デジタル変革に関して発揮されたリーダーシップにより、私たちは、高品質で持続可能なファッションを提供できる、比類ない立場にあります」としている。

2021年度には、40の市場に新たに226店舗をオープン。期末店舗数は6477店舗となった。世界の主要都市、ショッピング街、ショッピングセンターなどの、とくに注目度の高い場所に新店舗をオープンするとともに、既存店舗の売り場面積を拡大し続けている。新店は最新技術を活用したOMO(オンラインとオフラインの統合)型とし、販売ネットワーク全体が環境効率の高い基準に適合するようになった。

商材的には、「ZARA」でアスリートのためにデザインされたスポーツウェアの新コレクション「Athleticz」と、時代を超えた定番アイテムで現代的なワードローブを構築するためのシリーズ「Zara Origins」を発表。海外のファッションブランドとの協業も進め、韓国の「Ader Error」との協業ではZEPETOアプリを通じてバーチャル世界に進出し、メタバース参入の口火を切った。

コスメライン「Zara Beauty」も強化。「There is no beauty, only beauties」を掲げ、英国人メイクアップアーティストのダイアン・ケンダルとの協業による最高品質の新メイクアップシリーズを2021年春に投入。洞窟をイメージしたストア環境での訴求も始めている。

デジタルプラットフォームやロジスティクス、本社機能など、成長に向けた継続的な投資も行っている。

デジタルプラットフォームの変革では、2012年以降の累計投資額は130億ユーロ(約1兆7040億円)を超えた。特にデジタル化戦略や店舗とオンライン販売プラットフォームの統合は好調な業績を牽引。2020~2022年度では27億ユーロ(約3538億円)の設備投資を計画している。

スペインのアルテイショにあるグループ本社の施設の拡張と改善、集中物流システムの能力増強も実施。2022年には8000万ユーロ(約104億円)を投資し、Zaraの衣料品を世界的に流通させるサラゴサの物流センター(Plataforma Europa)の生産能力を20%増加させる計画だ。

本社複合施設内には、「ZARA」の販売・デザインチーム、オンライン業務を収容する5階建て・約17万平方メートルの新社屋を新設する。投資金額は約2億3800万ユーロ(約311億円)で、1月に着工済みで、2年後の完成を予定する。

2022年度については、2月24日にウクライナで紛争が発生。従業員の安全を最優先し、同国の全502店舗を閉鎖することを発表。3月5日には、操業の保証ができないため、ロシアでの活動を一時的に停止することを発表した。

2022年2月1日から3月13日までの店舗とオンラインを合わせた売上高は、前年同期比33%増、コロナ禍前の2019年比では21%増となった。ロシア連邦とウクライナでの売上は、売上増加の約5ポイントを占めたという。

なお、2011年から2019年までCEOを務めてきたパブロ・イスラ会長は3月末で退任し、4月1日には、創業者のアマンシオ・オルテガ氏の娘のマルタ・オルテガ氏が会長に就任することが決定している。

ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

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