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120年続くNYの老舗ホームファッション専門店が破綻 ライフスタイル提案の先駆け 視察でも人気

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
ABC Carpet&Homeは新品とビンテージの融合や大胆な装飾でも人気だった(写真:Splash/アフロ)

 百貨店やセレクトショップなど、多くのバイヤーや視察者が訪れることでも知られるニューヨークの老舗ホームファッション専門店ABC Carpet&Home(ABCカーペット&ホーム)が破綻した。米連邦破産法11条(チャプター11)を申請し、事業を継続すべく自ら売却する計画だ。

 ABCカーペット&ホームは1897年の創業で、ローワーイーストサイドで露天商としてラグ(カーペット)を販売したのが始まりだ。その後、ラグ専門店を構え、のちにユニオンスクエアに近いフラットアイアン地区のブロードウェイ沿いに旗艦店をオープンした。ブルックリンのサンセットパーク地区には倉庫型のアウトレットストアも構えている。一時はロンドンやフロリダにも出店していた。

 旗艦店では世界のデザイナーが手がけた新品のみならず、ビンテージやアンティークの家具や生活雑貨、ラグ、カーテン、照明、アート作品なども多く扱い、レストランも併設。そのセンスや、店内のビジュアルプレゼンテーションのユニークさなども含めて、ライフスタイル提案型ストアの先駆けとして、人々にインスピレーションを与える場所として、長く親しまれてきた。セレブリティや建築・インテリア・デザイン関係の顧客も多かった。

 近年、eコマースへの対応の遅れや店舗閉鎖、来店客数の減少などが続いていたところに、コロナ禍での店舗閉鎖やサプライチェーンの混乱による商品調達の遅延などが追い打ちをかけた。2017年度の売上高は約1億ドル(約110億円)だったが、直近ではその半分以下に落ち込んでいたもよう。

ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

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