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大阪・梅田で街や人の魅力を打ち出す新プロジェクト始動、イラストレーターの黒田征太郎氏インタビュー

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
ライブペインティングで共演する黒田征太郎氏(右)とタブゾンビ 写真:ワンオー

大阪・梅田の未来の街づくりプロジェクト「CREATIVE OCTOBER UMEDA」(クリエイティブ・オクトーバー・ウメダ)が始動した。現在開催中の「大阪文化芸術フェス」(注1)の公式・非公式の5つのプロジェクト(注2)を共同パブリシティし、カルチャー、アート、ファッション、フードなどを通じて梅田の魅力を伝えるとともに、情報発信やビジネスチャンスを生み出そうという試みだ。ワンオー(松井智則社長)が手がけるもので、渋谷区×アパレル企業でファッションを盛り上げる「SHIBUYA HARAJUKU FASHION FESTIVAL」(シブヤ・ハラジュク・ファッション・フェスティバル)や、大阪・中崎町で古着店やカフェなど地元店舗とクリエイターが参加するイベント「イコール(=)フェスティバル」などで培ってきた知見を活かす。

新イベント「BECAUSE This is it Osaka」(ビコーズ・ディス・イズ・イット・オオサカ)では、グランフロント大阪の隣に広がる再開発地区(うめきた2期)を拠点に、在阪の70の企業・ブランドを集積した。行列ができる人気カレー店や、毎年1万人が集う古着マーケットも誘致し、大きな賑わいを創出した。とくに盛り上がりを見せたのが、大阪市道頓堀出身の大御所イラストレーター、黒田征太郎氏によるライブペインティングだ。併せて「『KAKIBA(描場)』@うめきた出張所」として、起業家の想いをデザインするスペシャル企画も催された。黒田氏は、このイベントや作品にかけた想いを語り、未来を担う若者たちへのエールを送るとともに、昨今のアートにまつわる拝金主義に疑問を呈した。

黒田征太郎氏インタビュー

Q:トランぺッターの演奏に合わせてライブペインティングを行い、大阪万博をイメージした作品を描き上げた。そこに込めた想いは?

大阪万博をやる以上は、うまくやってほしい。誰か一人の建築家やアーティストが全部手がける、みたいなものはダメ。東京オリンピック・パラリンピックも問題はあるが、そこでいろいろと勉強させてもらい、大阪らしいことをうまく楽しくやって、みんなが笑顔になってほしい。

インストゥルメンタル系ジャズバンドSOIL&
インストゥルメンタル系ジャズバンドSOIL&"PIMP"SESSIONSのトランぺッター「タブゾンビ」と共演。BANPAKUの文字に色やメッセージを載せた

Q:ペイント中の姿や出来上がった作品を見て、あらためてアートのパワーを感じた。アートマーケットも盛り上がりを見せているが、思うところがあると聞く。

僕自身は「アート」という言葉は普段あまり使わないけれども、多くの人々が喜びを分かち合える素晴らしいものだ。ただし、最近はアートを金で評価しすぎている。千葉にあるZOZOという会社の人が、バスキアの作品をすごい金額(約123億円)で買ったことが話題になっていたけれど、あれはどうなのか……。僕はニューヨークに住んだことがあり、バスキア本人にも有名になる前に4~5回会っている。彼が生きていたら、金で騒がれるのは嫌だと思う。

僕も描くことが好きなので、アートを評価するのに「偉い」とか「高い」といわれるのはうれしくない。たとえば歌手にしても、歌が好きで、歌わずにはいられない、だから歌手になった、という人がかつては多かった。だけど、だんだん「100万枚売らなくちゃ」といった具合に、売ること、稼ぐことが目的になり、いい歌が減ってしまう。売れることが悪いと言っているわけではないが、売れることが目的ではさみしい。

かつて(北朝鮮の首都)平壌(ピョンヤン)でもライブペインティングをしたことがあるが、どこにいっても赤は赤だし、ドレミファソラシドのドはドだし、大金持ちでも貧乏な人でも色は同じように見えるもの。絵画やアートや音楽というのは、人間同士が同じ視線でいられる貴重なものだ。それが値段を軸に語られるようになっているのは残念だ。アートの楽しさを直接感じてもらいたい、という想いがあって、今回も依頼を引き受けた。

Q:若い起業家と対話をしながら、彼らの名刺やロゴなどをデザインするというぜいたくな企画も、黒田さん自ら発案したそうだが、その理由は?

このイベントには、若いスタートアップ系の人々が多く集まってくると聞いた。自分のビジネスやクリエイションをなんとかうまくいかせようと食らいついてくる人々を、僕ができることの中で応援できればと考えた。僕自身、若いころから(作家の)野坂昭如さんや、(先日逝去したイラストレーターの)和田誠さんなど、先輩にはとてもよくしてもらったので、若い世代に恩返しというか、支援の輪をつないでいくようなものだ。

起業家の夢や思いを名刺やポスターにする企画を黒田氏自ら提案。若い世代を応援する「恩送り」を実現するものだ
起業家の夢や思いを名刺やポスターにする企画を黒田氏自ら提案。若い世代を応援する「恩送り」を実現するものだ

名刺に入れるロゴやデザインなどのギャラについては、あえて価格は決めなかった。心付け程度でもいいし、儲かったら払ってもらうのでも、仕事が順調にいきはじめたらあらためて僕に仕事を依頼してもらう形でもいい。若い人たちにとっては、これから大変な時代がくるんだから、僕たちができることはしてあげたい。

業界関係者からは、「先生、気軽にライブペイントなどに出ないでください」「簡単に絵を描かないでください」「もっと先生然としていてください」といわれたりもする。「そのほうが作品や仕事の値段が上がりますよ」って。だけど、僕自身、手を動かしても減るものではないし、絵を描くのが好きだし。デジタル製品やインターネットが発達し、機械を通じて大量の情報が飛び交う今、肉声で想いを伝えたり、紙やボードに直接手で作品を描いたりすることはとても大事なこと。そういうものに触れる機会を若い人々に提供できてよかった。

御年80歳の黒田氏のエネルギーあふれる筆致や気迫が、若いクリエイターや起業家らにパワーや勇気を与えた
御年80歳の黒田氏のエネルギーあふれる筆致や気迫が、若いクリエイターや起業家らにパワーや勇気を与えた
「BECAUSE This is it Osaka」のステッカーのイラストも黒田氏が手がけた
「BECAUSE This is it Osaka」のステッカーのイラストも黒田氏が手がけた

注1:「大阪文化芸術フェス」(実行委員会:大阪府、大阪市、大阪商工会議所、大阪観光局、関西観光本部)が万博公園や府内各所で行われている。9月16日(月・祝)~11月17日(日)まで

注2:「CREATIVE OCTOBER UMEDA」

開催日時:10月25日(金)〜10月27日(日)

1)UNKNOWN ASIA ART EXCHANGE OSAKA

会場:グランフロント大阪 ナレッジキャピタル コングレコンベンションセンター

2)BECAUSE This is it Osaka

会場:うめきた2期地区 北街区暫定利用スペース

3)The CITY-社会を彫刻せよ-

会場:西田ビル、中津商店街など

4)スモーガスバーグ大阪

会場:OSAKA FOOD LAB/阪急中津スクエア

開催日時:10月26日(土)〜11月3日(日・祝)

5)イコール(=)フェスティバルin中崎町2019

会場:中崎町周辺店舗

ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

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