Yahoo!ニュース

米ウォルマートが売却する西友、買収候補として楽天に注目するワケ

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
西友と楽天は共同でネットスーパー事業を開始することを今年1月に発表している(写真:つのだよしお/アフロ)

 7月12日朝、「日本経済新聞」の特電という形で、「米ウォルマート、西友を売却へ 日本での店舗運営撤退」というスクープ記事が配信された。「買い手としては国内の大手小売りや総合商社などが候補になるとみられている。世界的なカネ余りが続くなか、投資余力のある投資ファンドも資金の出し手として有力視されている」とあるが、ここでもう一つ、私が買い手候補として注目したいのが、楽天だ。

 西友の親会社である米ウォルマート・ストアーズは今年1月、それまで組んでいたDeNAとの提携を解消し、ネットスーパー事業で楽天と提携することを発表。3月に合弁会社として楽天西友ネットスーパーを設立し、今夏にネットストアを「楽天西友ネットスーパー」として生まれ変わらせるべく協働してきた。一連の流れの中で、すでに両社として様々な戦略や可能性を検討してきたはずだ。

 もし、楽天が西友を買収すれば、西友のEC売上高を伸ばすだけでなく、オムニチャネル化により、喫緊の課題である、既存店の売上回復のカンフル剤になるかもしれない。たとえば、楽天のベストセラー商品を集めたコーナーを作ったり、各カテゴリーで打ち出したりすれば、新たな体験型売り場として活性化することもできるだろう。また、ネットとの連動を武器に販促コーナー化していけば、販売収益だけでなく、プロモーションフィーなど新たな収益源を開拓することも可能だろう。

 また、日経の記事では「5月時点で国内に335店を展開する西友を取り込むと店舗や物流拠点の統廃合といったコストに加え人材面での負担も生じるため、買い手探しが難航する可能性もある」と続けているが、楽天ならば、西友のリアル店舗を配送拠点にする“オムニチャネル物流”などで効率的に運用することもできるのではないか。

 ウォルマート、西友からの正式発表が待たれる。

ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

松下久美の最近の記事