日銀によるマイナス金利政策解除への備えを
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日本経済新聞の「異次元緩和 近づく出口」という特集記事の「中」として「市場の一歩先へ、動き出した日銀 後手に回るリスク警戒」と言うタイトルの記事が出ていた。このタイトルへの違和感から、現日銀執行部はどうやら次のステップに踏み出そうとしているのではないかと推測した。
そして30日にはロイターに元日銀副総裁の武藤敏郎・大和総研名誉理事によるインタビュー記事が掲載されていた。
来年の春闘が今年並みか若干上回れば物価目標が見通せる状況になるのではないかとし、来年4月にも政策変更の条件が整う可能性があると指摘した。政策修正する場合は、マイナス金利とイールドカーブ・コントロールは同時解除の可能性が高いとする一方、異常な金融緩和から「正常化した金融緩和」に戻す意味合いだと述べた(30日付ロイター)。
来年4月あたりまでに政策変更の条件が整う可能性があるというのは市場でもコンセンサスとなっている。
その根拠として、QUICKの月次調査(11月、外国為替市場)を挙げている。この調査によると、マイナス金利政策解除時期は「2024年4月」との回答が32%と最多で「2024年1月」も20%に上ったとある。また、QUICKの月次調査(11月、債券市場)では、2023年以内が3%、2024年1~3月が42%、2024年4~6月が39%となっており、6月までに8割程度、解除があると見込んでいる。
市場では日銀の展望レポートの発表に合わせ、物価等の見通し修正などを理由にマイナス金利政策を解除するのではとの見方が多い。
11月30日の2年国債の入札は低調な結果となり、この日の債券市場が乱高下した。これは東京時間の米国債の動きなども要因かとの見方もあった。しかし、債券先物の出来高が4兆円を超え、現物債も中期ゾーンを主体に1兆円規模の出来高があるなど、国内投資家がまとまった売買を仕掛けていた可能性がある。
中期ゾーンの商いは入札もあって多かったこともあるが、30日の金額はあまりみたことのない規模であったことで、大手銀行が大口の売却を行った可能性もありうるか。その背景に日銀のマイナス金利政策の解除に向けたポジション構築があったとの推測も可能となる。
日銀がどういったスケジュール感を持っているのかは、特に現体制となってから、推測が難しい。これまで裏切られることの連続であり、正常化への過剰な期待は依然として禁物かもしれない。
それでもさすがに「物」だけでなく「サービス」価格の上昇もあって、今後慎重ながらやっと重い腰を上げる可能性はありうるか。ただし、マイナス金利解除の前に行う必要があるものがある。決定会合後に発表される声明文の下記部分などの修正である。
「日本銀行としては、粘り強く金融緩和を継続する方針である」
「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」
いわゆるガイダンスの修正によって、金融政策の中立性を確保することが優先事項であろう。それを12月18、19日の金融政策決定会合で行う可能性もある。むろん、これは期待を込めてではあるが。いずれにしても、やっとマイナス金利政策を解除する、という蓋然性はかなり高まりつつあることも確かではなかろうか。