マイナス金利解除観測から長期金利は0.7%台に上昇
11日の債券市場で長期金利の指標となる新発10年国債利回りが上昇(債券価格は下落)し、一時0.7%と2014年1月以来の高い水準を付けた。これは日銀によるマイナス金利政策の解除が年内にも実施されるのではとの観測によるものである。
読売新聞は9日の朝刊で、日銀総裁の単独インタビュー記事を一面に掲載した。このインタビュー記事では、日銀総裁は「物価目標の実現にはまだ距離がある」としながらも、マイナス金利解除を選択肢としてあげた。マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば「やる」と発言していた。
問題はその時期であるが、総裁の発言からは年内の可能性も示唆されていた。ただし、今回のインタビューのタイミングなどから考慮すると、9月21、22日の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除などを決定する可能性が少なからず出てきたといえる。
日銀は7月28日の金融政策決定会合で、長期金利コントロールの上限を実質的に1.0%に引き上げたが、内田副総裁によるインタビュー記事が7月7日に日本経済新聞と共同通信に掲載されていた。これは読み方にもよるが、私は政策修正の可能性を示唆したものと読んでいた。
今回も政策修正の可能性を今度は総裁の口から、メディアは変えて伝えてきたとみている。そしてその主要な目的は円安対策であろう。もしそうであれば中途半端な口先介入だけでは相場のトレンドを修正することは難しい。つまり今回は少なくとも日銀が緩和方向だけみている姿勢から、双方向に動けることを具体的に示す必要がある。
そして、それをはっきり示す手段として、マイナス金利政策の解除が挙げられよう。
植田日銀総裁と岸田首相は8月22日に会談を行っていた。植田総裁は為替相場の動きについての議論は「特にない」と述べていたが、むしろそれが主題であった可能性がある。22日の夜に、岸田首相は、9月末に期限を迎えるガソリン価格高騰に対する激変緩和措置の延長を含め、燃料油価格対策を8月中に与党でとりまとめるよう指示を出していた。
ガソリン価格高騰には円安も当然絡んでおり、政府だけでなく日銀にも対応を求めた可能性がある。
8月24日~26日に植田総裁はジャクソンホール会議に参加していたが、もしかすると日銀総裁が孤立というか四面楚歌状態になっていたのではないかとも想像される。周りからは利上げ協奏曲しか聞こえてこなかったはずである。
そのジャクソンホール会議の討論会に出席し、基調インフレは依然、目標をやや下回っていると考えているとし、まだ2%の物価目標を安定的・持続的に達成する段階にないとして、それが現行の金融緩和の枠組みを堅持している理由だと述べていた。
しかし日銀は政府や、通貨政策を担当する財務省などからの意向を汲んで、金融政策の正常化に向けて動かざるを得なくなったとみて良いのではなかろうか。