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10年債利回りは1%が再び視野に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 10年債利回りは14日の10時半現在、0.960%と昨年11月1日以来の水準に上昇してきた。11月1日には0.970%まで上昇していたが、ここを抜けてくる可能性が出てきた。

 日本の10年債利回りのチャートを確認すると、0.970%を超えてくるとなれば、2012年以来となる。当然ながら1%が次の視野に入り、再び上昇トレンドとなる可能性が出てきた。

 日本の長期金利が再び上昇してきた背景として、円安とそれに対応すべく日銀の政策の変化が要因となっている。

 4月25、26日の日銀の金融政策決定会合の結果とその後の総裁会見をみると、完全な現状維持かとみられていた。しかし、それが円安の動きを煽る結果となってしまった。

 日銀の植田総裁は5月7日の夕方に、首相官邸で岸田首相と会談し、為替が経済物価に与える影響などについて議論した。

 このあたりから日銀の様相に変化が生じた。

 この場でどのような意見が交わされたのかは想像するしかないが、4日のイエレン米財務長官の発言も絡んでいた可能性がある。

 4日に米国のイエレン財務長官は「介入の有無についてコメントするつもりはない」と述べ、「それはうわさだと思う」と話した。その上で長官は、円相場は「比較的短期間にかなり動いた」と述べ、「こうした介入はまれであるべきで、協議が行われることが期待される」と付け加えた。

 13日にもイエレン米財務長官は、主要国の為替介入について「過剰な変動があれば実施することは可能だが、もっと根本的な政策の変更がない場合はいつも機能するとは限らない」と述べた。

 さらに介入は「極めてまれなこと」と従来からの表現を繰り返した。事前に貿易相手国との協議が必要だとの認識も繰り返した。

 外圧という言葉は使いたくはないが、それによって官邸が動いた可能性も完全には否定はできない。

 どうして4月26日の決定会合で日銀は頑なな姿勢を貫いたのかはわからないが、5月7日の首相官邸での会談後、日銀は柔軟な姿勢に転じてきたようにもみえた。

 それが9日に公表された「主な意見」に反映された。

 そして13日には国債買い入れの減額があった。それは4月からの国債発行額の減額に合わせるとともに、10年債利回り、長期金利の上昇を促すことも目的であった可能性もある。

 13日には日銀理事の業務担当が変更となり、加藤毅理事が企画局(金融政策の企画・立案等)・金融市場局(金融市場調節等)・決済機構局(決済システム、中央銀行デジタル通貨等)を担当することになった。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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