逆イールドがリセッションを招くわけではない
ゴールドマンのチーフエコノミスト、ヤン・ハッチウス氏は17日のリポートで、「逆イールドを巡る広範な懸念にわれわれはくみしない」と指摘した(18日付ブルームバーグ)。
逆イールドというのは順イールドの反対である。イールドというのは債券のイールドカーブのこと。通常のイールドカーブは右肩上がりとなる。期間の長い債券ほど価格変動リスクが大きくなりやすいためである。
しかし、このイールドカーブが右肩下がりとなることがまれにある。それが逆イールドと呼ばれるもので、米国では昨年3月あたりから2年債の利回りが10年債を上回る「逆イールド」が発生していた。
逆イールドには景気悪化を予告するとされ、過去7回の米国のリセッション入り前はいずれも逆イールドが発生していたとされる。
ただし、これは「逆イールド」が「リセッション」を招いているのではない点に注意すべきだ。「逆イールド」となった要因が、その後のリセッションとなる懸念を強めさせているのである。
今回の米国の逆イールドは物価の高騰に対して、FRBが積極的な利上げを行った結果、政策金利に連動しやすい中短期の国債の利回りはそれに応じて急上昇したが、金利の急上昇による景気への影響などが意識されて、期間の長い国債については、中短期債ほど積極的に売られなかった。これによって長期金利の上昇が短期金利の上昇に追いつけずに逆イールドが発生した。
これはつまり市場参加者による予想を大きく反映しているものであり、その結果が逆イールドとなっているだけである。もし仮にその予想が外れれば、逆イールド、イコール、リセッションとはならない。