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円安に向けた「3者会合」の過去の開催事例

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 円安となると開催されるものに3者会合がある。5月30日、財務省、金融庁、日銀は国際金融資本市場に関する情報交換会合(3者会合)を開催した。

 昨年は2月と6月、そして9月に3者会合が開催されていた。

 昨年2月28日、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえ、市場混乱の拡大を防ぐ姿勢を強調していた。財務省の神田真人財務官、金融庁の中島淳一長官、日銀の内田真一理事らが財務省内で会合を開いた。

 そして昨年3月以降に急速な円安が進行したことを受け、6月10日に3者会合が行われ、会合後に初めて声明文が公表された。

 その後もドル高・円安の流れが続いたため、昨年9月8日に再び3者会合が開催された。

 昨年9月14日には日銀が「レートチェック」を実施したとされ、その後、政府・日銀が9月22日に約2.8兆円、10月21日に約5.6兆円、10月24日に約0.7兆円のドル売り・円買い介入を実施していた。

 今年に入り3月17日に3者会合が開催された。この際には米シリコンバレーバンクの経営破綻をきっかけに金融不安が高まったことによるものとみられた。

 3月以降も円安が進行し、5月末にかけドル円が140円の大台に乗せてきたこともあり、5月30日に3者会合が開催された。

 5月からはメンバーが入れ替わり、財務省の神田真人財務官、金融庁の天谷知子金融国際審議官、日銀の清水誠一理事らが出席した。

 今回、これまであまり気にしていなかった3者会合を取り上げたのは、再び円安となってきたことで、この3者がどのような対応をみせるのかを探るためでもあった。

 昨年12月20日の金融政策決定会合で日銀は金融政策そのものの修正ではないとして、長期金利コントロールのレンジを±0.25%から同0.50%に拡大させた。どうしてこのタイミングであったのか。ひとつの見方として円安対策というものがあった。

 昨年の円安への対応として、財務省による為替介入だけに任すというのは、実はおかしい。円安の大きな要因が日銀の緩和硬直姿勢にあったためである。このため、昨年12月の修正は日銀もやや遅れたが、円安への対策を打ったとも読める。

 今後もし日銀がイールドカーブコントロールの再修正を行うとすれば、同様に円安対応を財務省などと協調して行う必要から実施される可能性がある。

 現在の日銀は自ら緩和修正に動くつもりはない。そんな日銀を動かすとすれば、円安となる可能性がある。

 6月中旬から再び円安圧力が強まり、ドル円は143円台、そしてユーロ円は156円台を付けてきた。

 修正があるとすれば昨年12月と同様のサプライズとなる可能性がある。その動きも探る上で、3者会合にも注意を向けた次第である。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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