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日銀の2%の物価目標とは何か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 「日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする」(日本銀行と共同声明、首相官邸のサイトより)。

 「日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」(2016年4月の日銀金融政策決定会合)。

 「日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する」(2023年1月の金融政策決定会合)。

 「日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する」(2023年3月の金融政策決定会合)。

 「日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく」(2023年3月の金融政策決定会合)。

 2%の物価安定の目標とは何であろうか。

 日銀はそれを全国消費者物価指数(生鮮食料品を除く)としていたはずである。展望レポートの物価予測も全国消費者物価指数(生鮮食料品を除く)であり、さらに全国消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)を参考数値としていた。

 5月19日に発表された4月の全国消費者物価指数(除く生鮮食料品=コア)は、前年同月比で3.4%の上昇となった。前年同月比の2%以上の上昇は2022年4月以降1年続いている。

 さらに生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコア)は、同4.1%もの上昇となっていた。消費税導入時や増税時の伸び率を上回り、第二次石油危機の影響で物価が上昇していた1981年9月以来、41年7か月ぶりの上昇率となった。

 数値上の2%の物価安定の目標は達成している。「賃金の上昇を伴う形で」と4月に急遽付け加えられたが、それは政府との共同声明には入っていない。その「賃金の上昇を伴う形で」の2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現とは、具体的にどのような物価指標で、どの程度の期間続けば良いかという明確な表現はされていない。かなり日銀の裁量に任されているかのような曖昧な表現となっている。

 まあ、細かいことはさておき、すでに2%という物価目標は数値上クリアされていることはたしかである。いつまでも非常時の異次元緩和を続ける必要性は失われている。2%の物価安定の目標を持続的・安定的に実現することをどうしても待ちたいのであれば、ひとまず正常の普通の金融緩和策に戻してからというのが当然ではなかろうか。

 どうして日銀は非常時緩和にしがみつきたいのか。金利がない異常な世界をこのままずっと維持させたいというのであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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