日経平均、1年8か月ぶりの3万円回復。でも手放しでは喜べない
17日の東京株式市場で日経平均株価が続伸し、節目の3万円を一時上回った。取引時間中に3万円台を付けるのは2021年9月以来、1年8か月ぶりとなる。
この前日の16日の東京株式市場では、東証株価指数(TOPIX)は3日続伸となり、12.33ポイント高の2127.18と1990年8月以来、約33年ぶりの水準を付けてきた。
2021年9月14日の東京株式市場で日経平均株価は30670円10銭に上昇し、1990年8月以来約31年ぶりの高値を付けていた。この数値にも接近しており、抜いてくる可能性も出てきた。
内閣府が17日に発表した1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.4%増、年率換算で1.6%増となった。3四半期ぶりにプラスとなったとはいえ、景気が極端に良いわけではない。
米国では米債務上限問題を巡る問題やら、地銀などの経営による金融不安、さらにはその原因ともいえるFRBの積極的な利上げによるリセッション懸念などが、不安要素として取り上げられている。この不安要素があるから日銀は異次元緩和すら修正に躊躇しているような状況にある。
日銀が異次元緩和をあらためない姿勢そのものも株価にとっては好都合となっているようにみえる。
米国の先行きが不安定であり、日銀が下手に非常時緩和を正常化することで、株価を下落させ、景気を下振れさせるリスクを極度に意識、いや言い訳にしているかの感もある。それに国民が沈黙の了承を与えているようにもみえる。
これは現在の日本を取り巻く、大きなリスク要因ともなりかねない。株価にみるように日本の景気はそれほど悪くなく、基盤も盤石とまではいえなくても、日銀の正常化程度には当然耐えうるはずである。物価はすでに日銀の正常化どころか利上げすら待ったなしの水準にある。
これらの矛盾がどのような格好で、市場そのものや経済実態に影響を与えているのか。また、その矛盾がどのようなかたちで表面化してくるのかは予測は難しい。
国債や借入金などを合わせた政府の債務、いわゆる国の借金は、ことし3月末の時点で1270兆円あまりと過去最大を更新しているが、それも何とも思わなくなっている。いろいろと麻痺している、いや麻痺させられている日本であり、見えないリスクが積み上がりつつあることだけは認識しておく必要はあると思う。