植田日銀の方向性は異次元緩和の長期維持なのか
日銀は4月28日に開催された金融政策決定会合にて、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)及び、資産買入れ方針の現状維持を全員一致で決定した。
一部期待のあったイールドカーブ・コントロールの修正は見送られた。そして、フォワードガイダンスの一部を修正した。
さらに1年から1年半程度の時間をかけて、多角的にレビューを行うこととした。
植田総裁は、金融緩和策のレビューは緩和策を縮小する出口戦略と関連があるのかを問われ、「レビュー期間の1年から1年半というのは微妙な長さかと思う。その間に正常化を始める可能性もゼロではない。そういう場合にはこのレビューは、必ずしも時間的に間に合わないということだ。そもそも現時点で、そこを狙って始めるわけではない」と述べた。
その一方で、「正常化を始めるプロセスがどんどん後ろずれしていく可能性もまたゼロではない。2年後、3年後、4年後ということになる可能性も残念だがありえる。そうすると、副作用をどういうふうにして継続していくのかという点は、当然考慮しなくてはいけない点になる」と述べた。
これらを受けて、日銀による金融政策の正常化が先送りされるとの見方が強まり、債券先物は急反発し、10年370回債の利回りは0.4%を割り込み、超長期債の利回り低下幅は0.1%を超えてきた。
植田体制となっても黒田体制と変わりなしとの見方から、日銀と欧米の中央銀行のスタンスの違いが再認識され、ドル円は136円台、ユーロ円は150円台に上昇した(円安)。
日銀執行部の新体制が発表され、その顔ぶれをみて危惧されたことが、明らかとなった。
特に内田副総裁はイールドカーブ・コントロールの修正を含めた正常化について以前からかなり懐疑的というスタンスとなっていた。つまり正常化には距離を置き、副作用には工夫で乗り切るというスタンスが垣間見えた。
このあたりを市場は察してきたということであろうか。しかし、そんなスタンスで今後も乗り切れるのかは甚だ疑問である。
4月の消費者物価指数は上昇幅を拡大させてくる可能性が高く、今後は食料品の値上げとともに、賃上げによる影響も出てこよう。
日銀の言うところの2%という物価目標が何であるのかが、かなり曖昧になってきている。2%を継続して達成するなど無理があるとみられたものが、すでに1年間も2%を上回っているし、さらに今後1年も展望レポートのコアコア予測でみると2.5%と2%を上回っているのである。