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眠った1000兆円の現預金を起こす方法

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 岸田文雄首相は26日の経済財政諮問会議で、「資産運用業等を抜本的に改革することが重要だ」として、資産運用会社の運用能力を強化するよう金融庁に指示した。日本の運用会社は中長期の資産形成に向かない金融商品を多く作るなど課題が多く、個人の「貯蓄から投資」を促すには、運用会社の改善が必要と判断した(26日付日本経済新聞)。

 家計の金融資産の半分を占める1000兆円の現預金を投資に回し、企業の成長を促しながら株価を上げて、資産所得を増やすのが政府の狙いだそうだが、それが運用会社の改善でもたらせられるのか。

 そもそもどうして1000兆円の現預金が眠ったままなのか。その大きな要因が、運用の指標のひとつとなっている金利が付いていないためである。

 金利が動けば、現状でいえば、金利が上昇すれば、これらの資金が動きだしてくる。特に現金で眠っている資金が利回りを追い求めてくることが予想される。

 大昔、銀行が発行している金融債に個人の資金が集中していたことがあった。預金は10年で倍になる(金利7%複利計算)といった認識も持たれていた時代もあった。いまは金利は付かなくて当然という認識となっている。

 しかし、すでに現在の物価水準はそういった時代と肩を並べつつある。それにもかかわらず、金利はゼロのまま(一部マイナス)。それはどうしてか。日銀がいろいろと理由を付けて利上げを嫌がっているためであり、しかも長期金利までも押さえつけているためである。

 もし首相が本気で1000兆円の現預金を動かしたいのであれば、物価動向に見合った金利を付ければ良い。頑として動きたくない日銀を動かせば良い。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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