金と銅の価格が過去最高値更新、銀の価格も上昇
20日のロンドン金属取引所(LME)の銅相場は一時、過去最高値を更新した。銅相場は4月上旬あたりから上昇し始め、やや過熱状態になっていたようである。
これを受けて5円玉など貨幣の材料費が上がっているとか。
5円玉の原料は銅と亜鉛からなる「黄銅」で、割合は銅が60~70%、亜鉛が40~30%になる。5円玉の重さ3.75グラムのうち平均して銅は2.44グラム、亜鉛は1.31グラムを含有する(16日付日本経済新聞)。
5円玉の材料費を建値から計算すると銅が4.03円、亜鉛が0.69円の合計で4.72円となり、すでに額面の94%となる。このまま銅の価格が上がり、さらに円安となれば、額面価格を上回る可能性も出てきている。
そして金(ゴールド)の価格も上昇している。国際指標となるニューヨーク先物(中心限月)で最高値を更新した。
海外相場の上昇基調を受け、国内の金価格も上昇している。地金商最大手の田中貴金属工業が発表した金の小売価格が最高値を更新した。
そして銀の価格も上昇してきている。やや出遅れ感があった銀も買われてきている。
この背景には4月の米消費者物価指数などで、米国のインフレの鈍化が意識され、米FRBによる利下げ期待が高まり、金利がつかない金の投資妙味が増し、資金が流入したとの解説があったが、腑に落ちない。
金については中国が引き続き購入している。個人による購入が活発化といったニュースもあったが、政府保有の金の残高も増加している。新興国の中央銀行が外貨準備で金保有を増やす動きも出ている。
米国の長期金利が上昇したことで、米ドル建ての米国債は価格が下落した。これを受けて米国債から金などに資金シフトしたところもあった可能性がある。
さらに貴金属の買いの要因としては、FRBの金融政策などとは別の側面もあるのではなかろうか。
そのひとつの要因として、地政学的リスクの増加がある。ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとパレスチナとの紛争、イランとイスラエルの緊張の高まりなどが、さらに飛び火してくる懸念もある。
米国大統領選の結果次第では、トランプ氏が返り咲く可能性もあり、これによってあらたなリスクも加わりかねない。
そこにインフレという問題も加わる。米国や日本では物価が下がりにくい状況となりつつある。たしかに貴金属は金利は付かない。しかし、物価高とはその反対にある通貨価値が下落することになる。
こういった理由により、金を中心に貴金属へ資金が流入している可能性も否定はできないのではなかろうか。