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物価に上昇圧力が掛かるなか、日銀は2022年度に過去最大規模の国債買い入れを行ったのはどうしてなのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 日銀は2022年度の国債買い入れ額が前年度から約63兆円増の135兆9890億円になったと発表した。2016年度の115兆8001億円を超えて過去最大となった(3日付時事通信)。

 日銀は2022年5月2日以降、明らかに応札が見込まれない場合を除き、指し値オペを毎営業日オファーすると発表。

 6月13日に10年新発債の利回りが0.255%を付け、日銀のYCC政策の許容変動幅の上限となっている0.25%を超えてきた。

 14日の日本の債券先物は一時147円32銭まで下落し、2015年7月以来の水準に下落。これを受けて日銀は臨時の国債買い入れオペをオファー。日銀は15日に債券先物のチーペストとなる356回の指し値オペを新たに加えた。

 日銀は6月13日から17日までに10兆9073億円もの長期国債買い入れを実施。

 9月1日の東京外為市場でドル円は7月14日に付けた直近高値の139円38銭を上回り、約24年ぶりのドル高円安水準に。日銀が14日、レートチェックを実施。19日に米10年債利回りが3.5%台を付けた。

 政府・日銀は22日、約24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入を実施した。

 10月21日のニューヨーク時間にドル円は一時151円94銭まで上昇し、32年ぶりの円安水準に。米10年債利回りが4.33%と15年ぶりの水準をつけた。21日、24日には政府日銀が覆面介入を実施。

 日銀は12月20日の金融政策決定会合で緩和政策の一部を修正。国債買い入れ額を大幅に増額しつつ、長期金利の変動幅を従来の±0.25%程度から±0.50程度に拡大した。これはサプライズとなった。

 日銀の政策修正が意識されたことで国債が売られ(利回りは上昇)、その結果、0.50%の指し値オペに応札が集中とた。

 日銀は2023年1月12日に国債買い入れで4兆6144億円買い入れた。1日の買い入れ金額としては過去最大となった。

 13日の10年債カレントの369回債の日本相互証券(BB)で付いた利回りが、一時0.545%と0.500%を超えて上昇。

 日銀は13日、国債買い入れで5兆83億円買い入れた。12日と合わせて10兆円近い国債を市場から買い入れた。17日にも8965億円国債を買い入れた。

 いろいろと思惑も出ていたなか、日銀は1月18日の金融政策決定会合では金融政策の現状維持を決めた。長期金利の変動幅も±0.5%程度のままとした。

 日銀が10年カレントの空売り対策を行ったこともあり、その後は指値オペによる買い入れは減少した。しかし、通常の国債買い入れは実施され、日銀による国債買い入れは継続していた。

 このように日本でも物価が上昇し、金利上昇圧力が強まる中、日銀は長期金利を無理矢理抑え込むため、10年国債を中心に積極的な買い入れを実施したことで、購入額が膨らんだのである。長期金利を抑え込むことで、過去最大規模の量的緩和を行って日銀は何をしたかったのであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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