日銀の異次元緩和の何がいけなかったのか。金利の上昇によって顕在化したそのリスク
日銀の異次元緩和に対しの批判がやっと強まってきた。批判ばかりするべきではないといった論調も出てきたが、批判すら出てこなかったことに対しても疑問を持つべきではなかったろうか。
そもそも何が日銀の金融政策をおかしくしてしまったのか。それは政府による圧力にほかならない。日銀の緩和が足りなかったからデフレとなってしまった。責任はすべて日銀の金融政策にあるといった考え方が政治家の間で強まり、それがアベノミクスというかたちで政策に組み込まれた。
日銀は2%という物価目標を設定させられ、政府との共同文書も作成した。これは決して日銀の本意ではなかったであろう。そして、黒田総裁とともにリフレ派が副総裁となり、リフレ派の審議委員も次々に送り込まれた。
黒田総裁はリフレ派ではなかったかもしれない。確かにリフレ派はフリーランチを好む。日銀の大胆な金融緩和とともに財政を拡大させ、増税はもってのほかというのが主なリフレ派の考え方であるとすれば、黒田総裁は財政については規律を必要とし増税に反対したわけではなかった。しかしこと金融政策に関しては、緩和以外は考えられないといったスタイルを10年間貫き通した。
その結果、日銀の金融政策は一方通行となってしまった。これは物価が低迷し、金利も上昇要因がない状態であれば問題は見えてこなかった。だから10年近くも異次元緩和を継続し、それに対する批判もそれほど出てこなかったといえる。
しかし、あくまでそれはリスクが消えたのではなく、見えていなかったに過ぎない。ところが、黒田日銀の最後の年にそのリスクが顕在化したのである。
あれだけの異次元緩和でも物価は上昇しなかった。これはある意味当然なことで、金融政策で物価を自在にコントロールはできない。これは長期金利に対しても同様であった。
ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、世界の物価が急上昇した。欧米の中央銀行を主体に積極的な利上げが繰り返され、欧米の長期金利が上昇した。
日本でも消費者物価指数が前年比4%を超えてきた。これらによって日本の長期金利にも上昇圧力が掛かった。これに対しブレーキの切れた日銀はこれを無理矢理抑えに掛かったのである。その結果、債券市場の機能が毀損された。
日本の財政の悪化も物価の低迷と長期金利の低迷でリスクが見えず、財政は拡大の一方となった。こちらのリスクも金利の上昇によって顕在化する。それが顕在化させないように日銀が一役買っていたということにもなり、それが大きな問題であったと思う。