日銀は2022年、物価上昇にもかかわらず、長期金利を抑えるためとして国債購入額を拡大
日銀は4日、2022年12月の長期国債の買い入れ額が16兆1809億円だったと発表した。年間の購入額は111兆607億円と長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を導入した2016年(119兆2416億円)以来の高水準となった(5日付日本経済新聞)。
2022年の消費者物価指数(除く生鮮)、これは日銀の2%という物価目標ともなっているが、こちらの前年同月比の推移を確認してみたい。
1月0.2%、2月0.6%、3月0.8%、4月2.1%、5月2.1%、6月2.2%、7月2.4%、8月2.8%、9月3.0%、10月3.6%、11月3.7%。
これを単純平均にしても2.1%台と2%を超えている。12月の数値が発表されると2022年の消費者物価指数(除く生鮮)の実際の数値が確認できる。
日銀は、「マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する」とある。
2022年4月以降、8か月連続で2%を超えてきている。それにもかかわらず、日銀はマネタリーベースを拡大した格好となる。
現在の日銀の金融政策の目標は短期金利と長期金利の金利となっており、量ではない。とはいえ、マネタリーベースの拡大は量的緩和の強化ということにもなる。それを物価が4%に迫っている状況でも行っている。
しかもこれは世界的な物価の上昇とそれによる欧米の長期金利の上昇を受けて、素直に日本の国債利回りにも上昇圧力がかかったことへの日銀の対抗手段によるものである。
日銀は無理矢理に日本の10年国債の利回りを0.25%に抑えるため、10年債カレント3銘柄を無制限毎営業日の指し値オペを実施。さらに債券先物への売りに対抗し、チーペストと呼ばれる10年国債の残存7年物も対象に無制限毎営業日の指し値オペを実施した。
それだけでなく通常の国債買入そのものも量を拡大した。それでも国債利回りの上昇圧力に耐えきれず、結果として長期金利の容認レンジを±0.25%から同0.50%に拡大した。その際、今度は2年債、5年債、20年債、30年債、40年債の指し値オペを導入した。
市場はファンダメンタルや海外金利の上昇などを受け、素直に上昇圧力を強めただけである。物価が2%を超えてきたのにもかかわらず、日銀は国債利回りを引き続き無理に抑え込み、その結果、量的緩和は拡大するという、矛盾に満ちた動きをしていたということになる。