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ユーロ発行までの経緯を振り返る

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 ドル円が155円台を付けてニュースになっているが、ユーロ円も一時166円90銭と2008年以来の円安ユーロ高水準を付けている。2008年のユーロ円の最高値は169円77銭とまだ多少距離はあるものの、そこをうかがう可能性も出てきた。

 ユーロが誕生したのが1999年1月である。ここではユーロが発行された経緯について振り返ってみたい。

 欧州では欧州通貨統合の機運の高まりにより、1972年に欧州為替相場同盟、1979年には欧州通貨制度が創設された。これに合わせて欧州通貨単位が導入された。これがEuropean Currency Unit、つまりECU(エキュー)である。

 ECUは加盟国の為替レートを固定し、将来的には通貨統合をおこなう目的で導入された。1979年3月から1998年12月までヨーロッパ共同体 (EC) および欧州連合 (EU) で使われていた「バスケット通貨」となる。

 ECU(エキュー)が統一通貨の名称にもなるとされていたが、この名称がフランスの銀貨「エキュ」と酷似していたことで、ドイツが統一通貨の名称として難色を示したことで、その結果として誕生した名称が「ユーロ」である。

 1992年2月7日にマーストリヒト条約が調印され、欧州連合(EU)が発足する。通貨制度について、単一通貨を導入することおよびヨーロッパ中央銀行を設立することが合意された。

 マーストリヒト条約によって改正されたEC条約では、ヨーロッパ中央銀行を設立することが定められ(8条)、その目標が「価格安定の維持(die Preisstabilitat zu gewahrleisten)」にあり(105条1項)、共同体の通貨政策(Geldpolitik)を決定し、執行することをその第1の任務として掲げた(同条2項)。

 銀行券の発行については、「ヨーロッパ中央銀行は共同体内において銀行券発行の許可を与える(genehmigen)排他的権利を有する。ヨーロッパ中央銀行および各国中央銀行には銀行券の発行に関する権限が授与される。ヨーロッパ中央銀行および各国中央銀行によって発行された銀行券は、共同体内において法定支払手段として通用する唯一の銀行券である」と定め(106条1項)、鋳貨については、「構成国は、鋳貨を発行する権利を有するが、その場合発行量についてヨーロッパ中央銀行による許可(Genehmigung)が必要である」(同条2項)とされた。

 当時のユーロ参加予定国のそれぞれの通貨とユーロとの為替レートが固定され、1999年1月に欧州の通貨統合により単一通貨であるユーロが導入された。

 ユーロの導入に伴って、ECUという欧州連合の公式通貨バスケットは消滅。ただし、この時点では、ユーロは銀行間取引など非現金取引を対象に導入されたものであり、いわば決済用仮想通貨として導入された格好となっていた。

 2001年9月からドイツでユーロが民間銀行に配付され、銀行ではドイツマルクを回収してユーロを供給することで切り替え作業が進められた。ユーロを導入した国ではそれぞれで2002年の2月あるいは6月までを移行期間として、代金の支払にユーロか旧通貨の使用が認められ、移行期間後は旧通貨の法的効力は消滅(その後も引き換えは可能となっていた)。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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