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ふじっ子煮も値上げ。来年は今年以上の食料品の値上げラッシュか。価格転嫁が進み消費者物価への影響も

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 フジッコは27日、「ふじっ子煮」シリーズの昆布製品、ヨーグルト製品など家庭用製品の計49品の標準小売価格を2023年3月1日出荷分から引き上げると発表した。昆布などの原材料価格や物流費が高騰しているため(27日付時事通信)。

 2023年も年初から食品値上げの動きが相次ぐ。帝国データバンクによると、来年1月の食品値上げは580品目にのぼるという。

 それだけではない。下記のレポートによると来年は今年以上の値上げラッシュが見込まれ、2023年1月から4月まで値上げが決定している品目数は7152品目に上った。

帝国データバンクのレポート(12月21日) https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p221211.pdf

 今年の食料品の値上げは、原料高・原油高・円安のトリプルパンチによる影響が大きかった。レポートによると8月以降は小麦など食材価格の高騰以外に原油高による輸入・物流コストの上昇が新たな値上げ要因として急浮上したとある。ロシアによるウクライナ侵攻が燃料コストの急騰や石油製品の価格上昇を招いた。そこにドル円が一時150円を突破するなど円安要因が加わった。

 しかし、ここにきて原油価格はいったんピークアウトし、円安も収まってきた。それでも来年は今年以上の値上げラッシュが続く予想となっている。それはどうしてなのか。

 2023年の値上げは、当初は輸入食品・飲料が中心だった。原材料価格、燃料コスト増による物流費用、そして円安が影響した。しかし、1年間で3度目の値上げとなった冷凍食品を中心に、再度・再再度の値上げとなったケースが目立って増加している。

 これは食材価格の上昇、物流費や人件費の上昇などコスト増要因が多様化・複雑化していることも挙げられている。さらに再度・再再度の値上げについては、消費者離れによる売り上げ減少を警戒しながら少しずつ価格転嫁しているとの指摘があった。

 円安修正は入ったものの、年初のドル円の110円台に比べて円安となっていることもたしかである。

 総務省が23日に発表した11月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は指数が前年同月比で3.7%上昇した。伸び率は第二次石油危機による物価高が続いていた1981年12月の4.0%以来、40年11か月ぶりの幅となった。

 これに対して日銀が12日に発表した11月の企業物価指数は前年同月比9.3%上昇となり、伸び率では9月をピークに鈍化した。

 企業物価指数の9.3%と消費者物価指数の3.7%という乖離を、価格転嫁が進むことによって、今後は少しずつ埋めてくることが予想される。

 これはつまり消費者物価指数が高止まりとなる可能性を示すものとなる。これをすべてコストプッシュによるものとみなすこともできずらくなる。今後の値上げは食材価格の上昇や物流費とともに人件費の上昇も加わってきているためである。

 コストプッシュだろうがデマンドプルだろうが物価の上昇に変わりはない。日銀はそれに見合った金利を付けるべきであり、我々はそれによる利子を享受し、値上げ分を少しでも緩和しうる権利を有しているはずなのだが。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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