日銀はこの物価高にあっても、普通の金融政策に転換する兆しさえ見せたくないようだ
日本銀行の黒田東彦総裁は6日、田村直樹審議委員が金融政策の枠組みや2%の物価安定目標の在り方について適切なタイミングで点検や検証を行う必要があるとの見解を示したことに関して、金融政策の枠組みについて具体的に論じるのは時期尚早だと述べた。衆院財務金融委員会で答弁した(6日付ブルームバーグ)。
田村直樹審議委員と高田創審議委員が就任したのは2022年7月24日であった。それ以降、9月と10月の金融政策決定会合では、田村審議委員、高田審議委員ともに現状の金融政策に賛成票を投じていた。
田村審議委員は三井住友銀行出身。高田審議委員は日本興業銀行から興銀証券、みずほ証券など証券畑が長い。いずれも金融に精通した人物である。このため、現在の日銀が行っているマイナス金利政策やイールドカーブコントロールの副作用についても良くわかっている人物である。
すでに世界的な物価上昇を背景に欧米の中央銀行は利上げに舵を取った。日本でもじわりじわりと物価が上昇してきた。欧米の国債利回りの上昇も受けて、日本の国債の利回りにも上昇圧力が加わった。
日本の消費者物価も前年比3%台に上昇するなど、金融政策を取り巻く状況は大きく変わってきた。そのなかにあって非常時の緩和策を続けても良いものかどうか疑問を持っていてもおかしくはない。
それにもかかわらず、何故、金融政策の現状維持に賛成票を投じていたのか。
サッカーではないが選手一丸となって、この場合は政策委員が一丸となって安定した物価上昇を目指すとしていたのかもしれない。しかし、反対意見があっても良いのが、いや、あってしかるべきなのが政策委員会のシステムのはずである。
「今のイールドカーブコントロールを変えないといけないとは全く考えていない。あくまでも2%の物価安定目標が持続的・安定的に達成されることが見通せるようになった時に当然、金融政策は修正変更されるべきだ」と黒田総裁は述べていた。
全く考えていないという意見に同意はできない。しかし、そのような考え方をしている人もいるのは確かである。もしそれがおかしいと思うのならば、その意見を金融政策決定会合にてぶつけるべきではなかろうか。
田村直樹審議委員で金融政策がひっくり変えるとは考えられないし、これで何かが変わるわけではないかもしれない。
しかも、このタイミングで、日銀の高田創審議委員は日本経済新聞とのインタビューで、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の解除について「残念ながらそういう局面になっていない」と述べていた。
日銀の政策が普通の政策に戻る可能性について、どうも現在の日銀はその片鱗すらみせるのを嫌がっているようにみえる。何をそこまで頑なになっているのであろうか。柔軟性はどこに置いてきたのか。
それでも反対票が出てくるのか、若干の期待を込めて、次回12月19日、20日の金融政策決定会合にも注目してみたい。